工藤 柊(くどう しゅう)


1999年生まれ。神戸大学を休学後、株式会社ブイクック代表取締役を務めるかたわら、NPO法人日本ヴィーガンコミュニティ代表として活動。ヴィーガンレシピ投稿サイト『ブイクック』を運営する。ヴィーガンレシピ本出版のためのクラウドファンディングも実施中。


ヴィーガンが暮らしやすい社会を目指して起業を決意

現在の活動内容を教えてください。


株式会社ブイクックにて、ヴィーガンレシピ投稿サイト『ブイクック』を運営しています。僕自身もヴィーガン当事者で、ヴィーガンやベジタリアンを実践する人が暮らしやすい社会を創りたいという想いから活動しています。


大学を休学後、NPO法人日本ヴィーガンコミュニティを2018年11月に設立し、代表を務めてきました。そのかたわら、もともと運営していたブイクック事業をさらに加速させるため、2020年4月に株式会社ブイクックを創業して今に至ります。





ヴィーガンレシピ投稿サイトのブイクックは、誰もがヴィーガン生活を気軽に始められるように、毎日の食事に取り入れられるレシピを提供するためスタートしました。現在は900以上のレシピが投稿されており、Instagramアカウントも18,000人もの方にフォローしていただいています。

工藤さんご自身もヴィーガンなんですね。「ヴィーガン」とはどんなものですか?


ヴィーガンとは、平たく言うと「ベジタリアンの強い版」です。1944年にイギリスで作られた言葉で、「動物を搾取しないライフスタイルを実践する人」を指します。


ベジタリアンとの違いは、肉や魚を食べないだけでなく、卵や乳製品、はちみつといったすべての動物性食材を避ける点です。また、衣類や日用品でも、革製品や動物実験を行なった商品などを使用しない方も多いです。


ヴィーガンと一言で言っても、選択する理由は人それぞれ。健康志向だけでなく、環境保全や動物愛護、宗教などが背景にあります。僕の場合は、環境保全と動物愛護の観点からヴィーガンを実践しています。

現在は、レシピ本を出版するためのクラウドファンディングも実施されていますね。





はい。「『世界一簡単にできるヴィーガンレシピ本』を1,000人に届けたい!」と銘打ってクラウドファンディングを開始しました。


『世界一簡単にできるヴィーガンレシピ本』には、レシピ協力者から募ったレシピやブイクックのレシピ100品を厳選して掲載する予定です。また、栄養学やヴィーガン対応の商品・飲食店の紹介など、ヴィーガン生活をいろいろな角度からサポートする情報も提供します。


まずは1000人の方にこのレシピ本を届けることが目標です!

今回、あえてレシピ本として出版しようと思ったのはなぜですか?Webサービスの方が情報を更新できますし、広く知ってもらえるような気がしますが。


1つは、ヴィーガンを実践するハードルを下げることがねらいです。レシピ本は、Webに比べて情報が厳選されていることが逆に強みで。Webだとレシピを自分で探さなければいけないため、初心者にはハードルが高いんです。本であれば、パラパラとページをめくって食べたいと思ったものから作ればいいので、能動的に調べる手間がありません。慣れてきてもっと凝ったヴィーガン料理を作ってみたいと思ったら、Webサービスのブイクックを参考にしてもらえれば良いなと思っています。


また、本が書店に並ぶことで、ヴィーガンを知らない人やネットで検索するほどでもない人にも興味を持ってもらうことを意識しています。誰が見ても魅力的なレシピ本にするため、デザイナーやカメラマン、栄養学監修者など、さまざまなスペシャリストの協力を得てクオリティの高いレシピ本を作っています。

「ヴィーガン」を知った日を境にライフスタイルを変えた

工藤さんがヴィーガン生活を始めた経緯を教えてください。


僕がヴィーガン生活を始めたのは、価値観ががらっと変わるショッキングな体験をしたからです。


高校3年生のある日、受験勉強を終えた帰り道のこと。ふと、何かの塊が道路にへばりついているのが目につきました。自転車を止めて近づいてみると、それは車に何度もひかれて原形を留めないほどぺちゃんこになった猫でした。目を凝らさなければ猫かどうかもわからないその状態を見て、僕は大きな衝撃と悲しみに打ちひしがれました。何かできることはないかと考えを巡らせましたが、そこまでひどい状態だと保健所にも引き取ってもらえません。タオルをかけ、手を合わせてその場を去るほかありませんでした。


家についてすぐにパソコンに向かい、「猫 車にひかれ 死亡」と調べてみました。どれだけの多くの猫が、交通事故で命を奪われていることか...。本当にいたたまれない気持ちになりました。それだけでなく、たくさんの動物たちが家畜として人間の勝手で殺されていること、牛や豚を育てる放牧地を作るために森林を燃やし、環境破壊を加速させていることを知ったんです。僕はそれまで「肉を食べることで起こっていること」について気にとめたこともありませんでした。ぺちゃんこの猫を見る直前、何も考えず晩御飯に唐揚げ丼を食べていた自分が恥ずかしくなりました。


そこからさらに調べてヴィーガンというライフスタイルを知り、次の日から実践することにしたんです。

次の日から!すごい行動力ですね。ヴィーガン生活を始めて、周りの人の反応はどうでしたか?


ヴィーガン生活を始めようと決意した次の日の朝、母に「これから肉や魚や乳製品は食べへんから」と話しました。反対こそされなかったものの、「じゃあ何やったら食べれるん?」と困惑していましたね。僕自身も何を食べていいのか分からず、最初は塩おにぎりや水炊きばかり食べていました(笑)。


学校ではもともと少し変わり者のポジションだったので、友人たちは「工藤がまた何か始めたぞ」とライトな反応で。その点で辛さを感じたことは無かったです。ただ、同じような仲間がいない孤独感はありましたね。良いことと思って始めてみたものの、あまりにも周りに実践している人がいないので「これは本当に意義のある行為なんだろうか?」と心が揺らぐこともありました。


そんな不安を吹き飛ばしてくれたのが、SNSやヴィーガンフェスで知り合った仲間たちです。自分が知らなかっただけで、こんなにも多くの人がヴィーガンを実践しているのかと心強くなりました。会社を立ち上げた今もNPO法人のコミュニティを継続しているのは、かつての僕と同じように、ヴィーガン生活を始めたてで苦労している人によりどころを提供できればという想いからです。

"Hello Vegan!"な社会を食卓から創りたい

工藤さんが活動を通じて実現したいことは何ですか?


環境や動物に優しい「ヴィーガン」というライフスタイルを広めることで、安心して暮らせる地球を次の世代に残したいです。


もしも自分に子どもができたとき、公園で遊べないほど外の気温が高くなっていたら。海水浴ができないほど海の水位が上がっていたら。そんな未来は実現させたくないなと思うんです。だからこそ、エコバッグを使ってみるくらいの感覚で「ヴィーガン」というライフスタイルを気軽に実践できるようにしたい。


そのために、株式会社ブイクックはヴィーガンやベジタリアンの人が暮らしやすい社会を目指して「Hello Vegan! な社会を、食卓から。」をミッションに活動しています。


とはいえ、「今すぐ全員が100%ヴィーガンになるべき」と言いたいわけではありません。ブイクックやレシピ本を通じてかんたんなレシピやスーパーで買える食品を紹介することで、まずは週1回でも食卓にヴィーガン料理を取り入れてもらえたら良いなと思います。


また、外食産業に関わる取り組みも構想中です。ヴィーガン料理専門店を新たに作るのではなく、今ある飲食店にヴィーガン料理の選択肢を増やすサポートしようと考えています。


自宅でヴィーガン料理を気軽に食べることができて、ヴィーガンでもそうでなくても、気兼ねなく一緒に外食できる社会を実現したいですね。