前田 雄太(まえだ ゆうた)


株式会社まんがたり代表取締役。新卒でエンジニアとして株式会社ワークスアプリケーションズに入社後、株式会社OKANを経て起業。「マンガ家芸能プロダクション」として、マンガを軸に事業を展開する。


マンガ家の苦しい実態を知り、立ち上がった

まずは御社の事業内容を教えてください。


「マンガ家芸能プロダクション」と銘打って、マンガに関する2つの事業をメインに展開しています。


1つ目はメディアマンガ事業です。マンガを用いて法人の営業やマーケティング、採用を支援するもので、弊社はクライアント企業とマンガ家の橋渡しのような存在を担います。とっつきやすく、文字では伝わりづらいメッセージも届けやすいマンガの特徴を活かし、新たな顧客層の開拓やPRにご活用いただいています。


そして2つ目の事業が、「今 世界を変える人をマンガに」をコンセプトに発行しているWeb連載マンガ『Foolish』です。マンガ版の『プロジェクトX』を目指し、世の中を良くするために奮闘している、まだ無名の挑戦者の決断や苦悩などをマンガにしています。起業家などをインタビューした上で、ビジネスにも精通するプロのマンガ家が読み切りマンガとして仕上げています。現在α版として提供していて、note上で無料でお読みいただけます。


これらの事業を通じて目指しているのは「マンガ家が食べていけない」という社会問題の解決です。みなさんが名前を知っているような人気マンガ家は全体のほんの一掴みで、トップ3%以外はまともに食べていくことも難しいとすら言われます。弊社の事業によって、生活に苦しむマンガ家を支援すると同時に、マンガという手段でビジネスを、引いては日本をアップデートしたいと考えています。

マンガというテーマで起業するに至った経緯を伺えますか?


まず、僕自身が大のマンガ好きというのが原点としてあります。物心ついたときからマンガに親しみ、ドラゴンボールを見ては「今度こそ『かめはめ波』を打つぞ」と懲りずに練習をするような小学生でしたね。そして社会人になってからも、思えば毎日マンガを読み、マンガに元気をもらい、マンガとともに前進してきました。


起業を決めたのは、あるマンガ家の卵との出会いがきっかけでした。「マンガ家に会えるぞ」とワクワクした気持ちで話を伺うと、予想だにしなかった厳しい業界の実態を知ることになったんです。ほとんどのマンガ家は食べて行けず、仕方なくアルバイトを掛け持ちしながら何とかやりくりしている現状。お話を伺ううちに、僕の当初のワクワクした気持ちは徐々に問題意識へと変わっていったんです。「なんとかしないと、10年後、マンガ家を目指す人がいなくなってしまう」と。それを機に、何か自分にできることはないかと考え始めました。今から2年半ほど前のことです。


その後、いきなり起業するのではなく、まずは少数精鋭のベンチャーで経営についてしっかり学ぼうと思い、たまたまご縁のあった株式会社OKANに転職。起業前提であることは会社にも理解いただいていたので、就業後や土日を使って起業に向けた準備を進めました。


とは言っても、当時の僕にはマンガ家とのつながりはまったくありません。そこでまずは、Twitterや友人の紹介を通じて、マンガ家に会い、彼らの課題を徹底的に理解するところから始めました。紹介に紹介を重ねて、お会いしたマンガ家の数は1年で200人以上に達しました。


彼らの話から、共通の課題があることがわかってきました。「金がない」「新しいつながりがない」「情報がない」の3つです。では、その課題をどうやって解決するか。大小50個くらいのアイデアのトライアンドエラーを繰り返した結果、現在の2つの事業にたどり着きました。1年半勤めたOKANから2019年に独立し、今に至ります。

「できるかできないか」ではなく「やりたいかやりたくないか」

それにしても、起業するというのは相当な決断だと思います。起業という手段を選んだのはなぜでしょうか?


実は、いずれは起業したいという思いはもとからありました。起業を意識したきっかけは、僕が新卒で入社したワークスアプリケーションズの会社説明会でした。創業者の牧野正幸さんのスピーチに、当時学生の僕は圧倒されました。「本当の意味で人生を安定させたければ、自分で0から1を作り出せるようになれ。誰も解決したことのない課題に挑戦する回数が大事だ」と。さらに「30になったら、全員会社を辞めて、それぞれ日本を代表する会社を作ってくれと」とまでおっしゃるんです。


僕は工業大学出身で、周りの学生の就職先は大手メーカーばかり。そんな中、僕は、牧野さん率いるワークスアプリケーションズで修行を積むことにしました。このときから、将来は自分も起業しようと考えるようになりました。

前田さんのように臆することなく挑戦するためには、どんなことが重要でしょうか?


「まずやってみる」という精神が大事だと思います。僕自身も、起業したのは33歳で、スタートアップとしてはむしろ遅め。それでも挑戦することができたのは、自分がほんの少しでも興味を持ったことはまずやってみるということを続けてきたからだと思うんです。うまくいかないかもしれないけれど、やってみないとわからない。「できるかできないか」ではなく、「やりたいかやりたくないか」で判断するように心がけることで、いずれ大きな挑戦も厭わなくなっていくのかなと思います。


とは言え、そもそもやりたいことが見つからないという方もいるでしょう。そういうときは、目の前にある「比較的やりたいこと」からやっていけばいい。それを繰り返していけば、いつか本当にやりたいことに巡り合うことができるはずです。


また、失敗は決してマイナスではないと認識することも重要です。マイナスを避けるあまり、挑戦できなくなってしまう方は少なくありません。でも、実は失敗も、その経験をすること自体がプラスなんです。むしろ、変化の激しいこのご時世、現状維持のほうがマイナスになる可能性すらあります。とにかくやってみて、そのすべてをプラスと捉えられれば、前向きに挑戦できるのではないかと思います。


最後に、前田さん自身が今後挑戦していきたいことを教えてください。


Foolishを世界展開したいです。新しいチャレンジをしている人は、当然日本以外にもいます。世界中の挑戦者をマンガにし、それをこれからキャリアを築いていく学生に届けたいと思っています。Foolishで取り上げる人物は、過去の偉人ではなく、今まさにリアルタイムでリスクをとって挑戦している人。そんなリアリティあふれるストーリーをマンガで届けることで、挑戦者を増やしていければと思っています。