長谷川 朋弥(はせがわ ともや)


株式会社Your Verse代表取締役社長CEO。大学卒業後、グローウィン・パートナーズ株式会社に入社。新規事業の立ち上げを推進し、入社3年で最年少部長に就任。大手上場企業とのアライアンス戦略やセミナー講師も数多く務める。2019年に株式会社Your Verseを創業。個人の自己認識能力を高めるセルフアウェアツール「People's」を開発。法人・個人へ展開する。


人が前向きに変化する瞬間に立ち会う仕事

御社の事業内容について教えてください。


現在の主な事業は、1000人規模の大手法人への組織・人材開発研修です。20代の若手社員と管理職の方々を対象に、仕事に対するモチベーションや肯定的な意味付けを養う研修を提供しています。


研修では、自己認識力を高めることを大きなテーマとしています。「自分は何をしたいのか」「なぜこの会社に入ったのか」といった問いを自分に投げかけることで、目的意識を磨き上げていきます。


その際に用いるのが「セルフストーリーチャート」というメソッドです。一言で言うならば、過去にやってきたことを見つめ直す中で、自分の意識状態を直感的に認知してもらう手法です。人は、社会や企業での義務や責任から、自分の素直な感情に対して無意識的にメンタルブロックを張ってしまっているもの。それを取っ払い、心の底にある本心に気付くことができるのがセルフストーリーチャートの大きな特徴です。


研修後には、今までの仕事に一層力を入れて取り組む方や、新しいチャレンジを始める方など、それぞれの意思に応じたさまざまな行動が生まれます。これまで目標を失っていたり、型にはまった自己像に苦しんでいたりした方が変わっていく瞬間に立ち会えることが何より嬉しいです。

起業して、この事業を始めるに至った経緯を伺えますか?


起業を志した最初のきっかけは、大学時代に「武者修行」という海外インターンプログラムに参加したことです。優秀な参加者から刺激を受け「いつかは起業したい」という気持ちが芽生えました。


ただ、その時点ではどんな事業で起業するかはイメージできていなくて、まずは起業に必要なスキルを身につけられる会社で働こうと思ったんです。グローウィン・パートナーズを選んだのは、当時、従業員数30人程度とちょうどいい規模感で、尊敬できる経営陣と会社を大きくしていく経験ができることに加え、会計スキルを身につけられることにも魅力を感じたからです。


期待していた通り、入社後からたくさんの挑戦をさせていただき、入社3年目で新規事業部長に就任しました。この頃になるといよいよ、会社ではなく自分自身の思いを込めた事業を作ってみたいという気持ちが強くなり、起業意欲が高まってきたんです。


でも、どんな事業をやるかは依然として決まっていませんでした。そこで、今は共同創業者にもなっている大学の先輩だった黒澤さんに相談してみることにしました。すると、彼から「とっておきの人がいる」と、セルフストーリーチャートを用いて経営者向けにコーチングを行っていた齋藤さんを紹介してもらったんです。ちなみに斎藤さんも、現在は弊社取締役を務めています。


齋藤さんのコーチングを実際に受けてみた感想は「衝撃」の一言でした。これまでも自己分析セミナーやワークショップの類はたくさん受けてきたつもりでしたが、結局型にはめ込んで終わってしまうものや、一時的な変化があるだけのものが少なくありませんでした。


セルフストーリーチャートはこれまでのどんなメソッドとも違い、右脳と左脳を両方使って自分の人生を振り返りつつ、自分との素直な対話を通して本当にやりたいことを見つけていくというものでした。私自身、コーチングを通じてやりたいことが驚くほど明確になって、自分の内面で沸々と変化が起きているのを感じました。


「この衝撃、変化を広めたい」そう強く思った瞬間でした。

世界中の個人・組織にもたらしたい価値とは?

もともと人に関わる事業をすることに関心はあったのでしょうか?


あるにはありましたが、人の自己認識力を高めていきたいとより強く思ったのは、むしろセルフストーリーチャートに出会った後で起きた、ある大きな出来事が影響しています。弟の死です。


ドラマーとしてバンド活動に明け暮れた彼は、25歳のとき、現実を直視して企業で働くという選択をしました。音楽活動と関連性のある楽器メーカーに就職しましたが、組織に合わず、転職を繰り返し、うつ病になってしまったんです。そして最後には、自ら命を絶ちました。


悲しみの最中「彼が本当にやりたかったことを社会の中でなぜできなかったのか」「自分にできることはなかったのか」と考えずにはいられませんでした。「自分が今、どんなことをネガティブに捉えていて、本当はどうしたいのか」を正しく認知できていれば、死を選ぶほど追い込まれることはなかったのではないか。そう考えると同時に、それができるのがセルフストーリーチャートに他ならないと確信した私は、事業化に向けてこれまで以上に奔走しました。


グローウィン・パートナーズ内の新規事業として行うという選択肢も検討しましたが、やはり自分自身の会社を立ち上げ、この事業をやっていくことに意味があるなと思い、2019年8月にYour Verseを設立しました。


セルフストーリーチャートをどこから広めていくべきかを考えたときに、まず最初に選んだのは日本の大手企業です。グローウィン・パートナーズでの経験から、優秀な若手人材がそろっているのに、組織と若手社員とのすれ違いから、彼らの可能性が発揮されきっていないことに課題意識を持っていたからです。若手社員は「どうせ自分の意思を表明しても無駄だ」と、経営層は「最近の若手は元気がない」と思っている。そんな噛み合わない状態を打開したいと考えたんです。

これから事業展開をしていく上で、どんな社会を作っていきたいですか?

大量生産・大量消費に代表される従来の価値観が大きく変わろうとしている現代は、同じく価値観ががらっと変わった時代であるルネサンスと共通するものがあります。価値観の変化により人類はさらに進化し、政治、ビジネス、教育、家庭などさまざまな分野でルールチェンジが起きていくはずです。


そのような動きの中で、今後世界は、一者総取りの競争社会から、個人それぞれが共創していく社会にシフトすると考えています。誰もが主役になれる時代になると。そんな時代を迎えるにあたって、私は全世界および全世代に、自己認識力を高める機会づくりをしたいと思っています。


たとえば今取り組んでいるのは、セルフストーリーチャートのアプリ化です。自分が何をしたいのかを自己認識できるコンパスのようなツールを開発しています。これを日本だけではなく世界中に展開していく予定です。若い世代に限らず高齢者まで、あらゆる世代がやりたいことを持ち、取り組み続けられるような世界にしていきたいです。