竹内 隆太(たけうち りゅうた)


1994年生まれ。「ポスト資本主義社会を具現化する」というビジョンを掲げる一般社団法人Next Commons Labで、自律分散型社会の実現を目指し、事業開発に従事する。


先輩を自殺に追い込んだ競争社会

現在のお仕事内容について教えてください。


「ポスト資本主義社会を具現化する」というビジョンを掲げる一般社団法人Next Commons Labで、コミュニティのアップデートを軸に事業開発と拠点運営に携わっています。目指すは、自律分散型社会の実現。そのために、新たな社会を作っていく人たちのためのプラットフォーム構築と、それぞれのコミュニティが持続的に活動できるような仕組みづくりをしています。このような大きな構想の下で、私は現在、最先端の課題が露呈している地方を軸に、大手企業と協業しながらソーシャルグッドなサービス作りに励んでいます。


学生時代から、資本主義というシステムに対して懐疑心を抱いていました。そんな折に知人の紹介で弊団体を知り、自分が問題意識を持っていたことに取り組むビジョンに共感。参画を即決し、今に至ります。

資本主義に懐疑心を抱いていたんですね。詳しく教えてください。


資本主義の原動力とも言える「競争」の弊害をたくさん経験してきたことから、懐疑心が芽生えました。


私はかつて、サッカー選手を目指していました。幼少期からサッカーに明け暮れ、高校では強豪校の部長を務め、多くの大学からオファーも来ました。でも、無理をしていたんでしょう。部員とのコミュニケーションがうまくとれなかったこともあり、途中から部活に行くことは決して楽しいものではありませんでした。部長として、部員に「部活来いよ」と言う私自身が、実は誰よりも行きたくない。なんとか引退するまでやり切ったものの、とたんに張り詰めていた気持ちが切れて、躁うつ状態になってしまったんです。


来る日も来る日も、猛烈なフラッシュバックに襲われて眠れない。友人の目を気にして、電車に乗ることもできない。そんな時期がありました。周囲の人に助けてもらい、躁うつ状態から脱することはできたものの、私のサッカー人生はそこで終わりました。


大学時代には、さらにショックな出来事がありました。私がインドで1年間インターンシップに参加した際、とてもお世話になった先輩の話です。


彼はインドから帰国した後、明るい未来へ踏み出そうと “就活” に臨みました。しかし、面接の場で、彼の未来への希望は一瞬にして奪われてしまったのです。面接官に人格否定をされたことをきっかけに、彼はその後家に引きこもり、そして自ら命を断つという選択をとりました。


彼が亡くなった後、ご両親の話でこのことを知りました。躁うつ状態を経験したことのある私にとって、それはまったく他人事ではなく、やるせない気持ちでいっぱいでした。


彼の自殺以上に心を痛めたのは周囲の反応です。「たかが就活で自殺するなんて。競争社会でうまくいかなかったのは自己責任。死ぬのも自己責任。」そんな空気を感じて、強い憤りを感じるとともに、やり場のない思いを抱いたことを今でも鮮明に覚えています。


思い返せば私も、サッカーをしていたころは競争社会にどっぷり浸かっていた人間です。当時はいかに勝つかだけを考えて、その視点でしか物事を捉えられていなかった気がして、自分に対しても不信感を覚えました。その極端な考え方は、人が幸せに生きることから大きく乖離しているような気がしてなりませんでした。


当初、先輩を自殺に追い込んだ新卒採用市場に疑念を抱いた私は、就職活動にまつわる活動を多方面からこなしました。自身が就活をする立場になったり、エージェント業務をおこなったり、あるいは新卒採用業務に携わったり。こうした活動によって気付いたのは、新卒採用市場、引いては現行の資本主義社会における「市場」という概念の不完全性でした。資本家と労働者がいて、一つひとつの局面は勝つか負けるかのゼロサムゲームで成立している市場。そこで勝ち続けることに過剰なほどに熱心なのが現在の社会の性格です。もちろん、その恩恵によって私達は豊かさを享受していますが、決して万能な社会システムではないんだなと。資本主義の良い点は維持しながら、不完全な仕組みをアップデートできないか。そんなことを考えていた矢先、弊団体に行き着いたんです。

複数の依存先を持てば、折れずに生きていける

資本主義の弊害を認識された今、どのような社会を目指していますか?


究極的には、誰もが ”らしく” 生きることができる社会が理想です。「その人らしい」とは、自身の未来にワクワクしているがために、今に納得感があること。そのような人たちは、辛いことがあっても折れずに生きていけると思います。


ただ、それには前提があって、彼/彼女らには複数の依存先が必要だと私は考えています。当時サッカー部という唯一のコミュニティに生きづらさを感じた私は、逃げ場がなく、気付いたら躁うつ状態にまで追い込まれてしまいました。でも、あのとき別の居場所があれば、病まずに済んだかもしれません。


そもそも人は本能的に競争をする生き物であり、競争はこの世から完全になくなることはありませんし、なくすべきだとも思っていません。競争には、勝者と敗者がつきものです。人は誰しも敗者になり得るからこそ「負けたらそれで終わり」という状態に陥らない社会システムが必要だと考えています。


負けたときに喪失感を感じるのは、そこにしか居場所がないからです。嫉妬やいじめも本質的には同じで、特定のコミュニティにのみ依存していると、人間関係の不和や衝突から逃れることができません。複数の依存先を持つことは、言わば競争社会におけるセーフティネット。安心して負けることができる世界を作ることで競争の弊害を最小化し、より健全な資本主義社会にアップデートできるのではないかと考えています。

今後2~3年で挑戦したいことについて教えてください。


まずは弊団体で、今携わっている事業をしっかりと作りきることに力を注ぎたいと考えています。Next Commons Labという組織での活動を通して資本主義をアップデートするための仮説を、実際に検証してみたいんです。


一方「より良い資本主義の形とは何か」という問いを、ビジネスだけではなく学術的見地からさらに深めてみたいという思いもあります。経済学の理論やその周辺領域の学問分野などからポスト資本主義について研究し、得られた知見を最終的にプロダクトとして社会実装する。アカデミアとビジネス両面から、資本主義の最適な形を模索し続けたいです。また、2020年からは、共感してくれている仲間たちとともに新たな活動も始めようと考えています。