小掠 康浩(おぐら やすひろ)


株式会社Anylog 代表取締役社長。株式会社ジャパンディスプレイを経て2018年に創業。安心・安全を追求したリアルオーガニックのメンズコスメブランド『IYVO』(イーヴォ)を展開する。


ニキビ肌にコンプレックスを抱えた思春期の頃

現在のお仕事内容について教えてください。


2018年に起業し、安心・安全を追求したリアルオーガニックのメンズコスメブランド『IYVO』(イーヴォ)をD2C(※ Direct To Consumerの略。消費者に対して製品を直接的に販売するビジネスモデルを指す)モデルで展開しています。シリーズ第一弾として、近日中に『IYVO FACIAL TONER』をリリース予定です。ターゲットは10代・20代のミレニアル世代。ニキビや吹き出物といった肌のトラブルを抱える年頃の男子の悩みに応えていきます。


最もわかりやすい形で安心・安全であることをユーザーに伝えるため、化学物質を極力排除し、誰にでもわかるシンプルな原料を使っています。原料となる水から植物由来の原料に至るまで品質を徹底的にこだわり抜いたことで、若い男子の健康な肌を守る「一生使える化粧品」に仕上げました。

随所にこだわりを感じる商品ですね。メンズコスメの分野に目をつけたのはなぜでしょうか?


実は、弊社は創業当初、食にまつわる事業を展開していました。しかし、結果的にユーザーのニーズを捉えきれずに撤退。次の事業として何をやりたいかを1000本ノックのように考えていたときに出てきたのが、メンズコスメ事業でした。最も大きな理由は、僕自身が思春期の頃、ニキビでとても悩んだ経験があったからです。もともと皮脂が多い体質で、当時はあぶらとり紙が何枚あっても足りないほどの重症。友達にからかわれ、異性を気にする時期でもあったので、いつも人目を気にしてコンプレックスに感じていましたね。


ここ数年でメンズコスメ市場は急激に拡大しています。男性がメイクやスキンケアをすることがまったく珍しくない時代になっているタイミングだからこそ、自分の原体験をベースに若い男子の肌の悩みを解決できるのではないかと考えました。「伸びている市場を狙う」「顧客のペインポイントを突く」という前事業で得た教訓も活かせる領域だと感じました。調べてみると、若い男子に特化したコスメはまだ少なかったんです。


ただ「若い男子向けのコスメ」というだけではコンセプトとして弱い。そこで、化学物質をできる限り排除した天然成分によって、10代・20代の健康的な肌を守ることを付加価値にしました。化学物質由来の化粧品によって皮膚疾患等のトラブルを抱えてしまった方々から直接お話を伺う機会があって、彼らのニーズの深さを実感しました。単にデザインやかっこよさで選ぶのではなく、若いからこそ安全性を重視しなくてはならないということを『IYVO』を通じて伝えていきたいと思ったんです。


また、ユーザーの喜びの声を直接聞けるシンプルなビジネスをやりたいという想いもありました。D2Cというビジネスモデルを選んだのはそのためです。ユーザーとできるだけ1:1で向き合い、ご意見を直接いただいて商品を一緒に作っていくことで、自分が社会の役に立っていることを噛み締められる気がしたんです。

商品を開発していく中で印象に残っていることはありますか?


製造委託先の工場を探し求めて、商品コンセプトをプレゼンして廻っていたときのことが印象に残っています。とある工場の社長から「君のやりたいことは伝わってきたけど、それをほしいと言ってくれる人は本当にいるのかな」と指摘されて。「単なる自己満足で作ってしまうと、君自身が苦労することになるよ」と追い返されてしまったんです。本来、お金を払って在庫を抱えるのは僕のほうで、彼が僕を追い返す義理はありません。それでも厳しいことを言ってくださったことに感激して「絶対にこの工場で作ってもらおう」と心に決めました。


その日から、コンセプトを徹底的に磨きこみました。「化学物質を排除したリアルオーガニック」という商品軸ができたのはこの頃です。


2ヶ月後、再び彼にプレゼンするために工場を訪ねました。すると今度は「わかった。やってみよう」と。僕の熱意に根負けした部分もあるとは思いますが、そのときはひと山越えられたような気持ちでしたね。現在はその会社と一緒に商品開発を進めています。

自分の力で社会に付加価値を生み出したい

小掠さんは会社員を経て起業されていますね。起業に踏み切った経緯を教えてください。


生い立ちからお話すると、僕は一家全員公務員という環境で育ちました。父も叔父も祖母も、役所職員や学校教員。そのため、子どもの頃は一般企業に勤めている人との関わりがほとんどありませんでした。安定した生活を送れることは大変幸せに感じていましたが、子ども心にだんだんと物足りなさを感じるようになって。「安定志向で終える人生なんて嫌だ。一度きりの人生をもっと楽しむ方法があるんじゃないか」と考えていたんです。


そこでまずは、僕にとって身近とは程遠かった一般企業に就職しました。規模が大きければやれることも幅広いだろうと考えて大企業に入社しましたが、実際には巨大な事業を安定的に回すため、高度に分業化されている内部の実態を目にすることになります。僕は人事を担当していましたが、自分の働きが会社の利益にどう貢献しているのか、社会にどれだけの価値を還元できているのかがまったく見えない日々が続きました。


「一体僕は何のために働いているんだろう。」そう改めて自分に問うてみると、「この社会にいる以上、世のため人のためになって、社会に爪痕を残したい」という気持ちが湧き上がってきました。「それを実現し、実感することは、おそらく大企業ではできないだろう。」そう思って、自分の力で社会に付加価値を提供するために起業という道を選んだんです。見切り発車の部分もありましたが、不安よりもワクワク感のほうがはるかに大きかった。やらない後悔よりやる後悔。そんな想いで毎日取り組んでいます。

今目標にしていることを教えてください。


急成長中のメンズコスメ市場で、「オーガニック」という分野を確立して自分が第一人者になりたいと思っています。女性のコスメ市場はとても大きく、年齢別、用途別、原料別等、さまざまな切り口で細分化されていますが、メンズコスメ市場はそのようなくくりが未確立です。「男性向けのオーガニックコスメと言えば『IYVO』」という認知を広げ、1人でも多くの若い男子に安心・安全な化粧品を届けていきたいですね。