プロフィール


1991年生まれ。大手電機メーカーにて、AI(人工知能)・ロボティクス領域の新規事業に事業企画担当として携わる。


スーパー戦隊の合体ロボのおもちゃに感動した幼稚園時代

現在のお仕事内容について教えてください。


電機メーカーでAI・ロボティクス領域の新規事業を扱う部署に所属し、コンシューマー向けロボットの事業企画を担当しています。ビジネス上の位置付けを意識しながら、企画として商品・サービスの方向性や要件定義を行い、ハードウェア・ソフトウェアの設計メンバーや製造、販売、管理、カスタマーサポートなど各役割を担うチームともコミュニケーションしながら事業を推進する仕事です。


新規事業の部門は、他の事業部と比べると、良くも悪くも職種ごとの役割やオペレーションが十分に確立されていない側面があります。枠にとらわれず、今やるべきことを自ら見つけて取り組む、ある意味「なんでも屋」的な働き方をしているので、大変ですが日々刺激は尽きないですね。

もともとロボットに関心があったのでしょうか? 今の仕事に就くまでの経緯を教えてください。


「ロボット」と分野を定めたのは大学生の後半ですが、電化製品やガジェット、機械など、関連する分野には昔から興味がありました。


ロボットとの最初の出会いはおそらく、スーパー戦隊の合体ロボだったと思います。テレビ放送やヒーローショーももちろん大好きでしたが、忘れられないのは、幼稚園のときの誕生日プレゼントで買ってもらった、戦隊ヒーローの超合金合体ロボのおもちゃです。5体の動物型ロボットが合体して1つの人型ロボットになるんですが、それぞれのパーツの変形や合体の仕組みが本当にうまくできていたんです。「こんなものを作れる人は天才なんじゃないか」と、幼いながらに感動したのをよく覚えていて「将来はおもちゃメーカーで合体ロボを設計する仕事がしたい」と ピンポイントな夢を持っていた時期もありました(笑)。


手先が器用で、お絵描きや工作が得意だったので「僕の考えた最強のロボット」のような絵をよく描いて楽しんでいました。「得意科目は?」と聞かれると「図工」と答えるような小学生でしたね。


中高では、物理部(電子工作部)に入部しました。電子工作に触れ、動物型の簡単なロボットや電子工作による体験アトラクション等、仲間と一緒にいろんなものを作りました。部内には、組み込みが得意な人、ハンダ付けなら誰にも負けない人、ソフトウェア開発ができる人など、さまざまな強みを持つメンバーがいて、その強みを持ち寄った結果、自分1人では作れないものができあがる経験を積むことができました。僕自身は、ユーザーが触れるインタフェースの設計や、それを通じた全体の体験 ―いわゆるUI・UX ― をつくる役割を担うことが多かったと記憶しています。思い返してみると、今の仕事にも通ずる部分が多くあります。絵を描くのも相変わらず好きだったので、美術部でデッサンや油絵等を通じて絵画の技法を学んだり、学内イベントで大きな壁画をチームで描いたりもしていました。

物理部や美術部での経験を通じて実感したことがあります。それは、人が扱うものを作る上で、機能を実現する構造やシステムと同じくらい、その見た目や印象も重要だということ。機能とデザインの関係性について深く学びたいと思い、大学ではプロダクトデザインと工学を扱う学科に進学。当時は、電機メーカーのデザイン部門で働くことを目標にしていて、デザイン系のインターンに積極的に参加していました。


そして、大学4年生の頃、衝撃的な出来事が起きます。ソフトバンクが、人型ロボット「Pepper」を発表したんです。驚いたのは、人間サイズのロボットを量産して一般に販売するというその発表内容。人型ロボットの開発自体はHondaのASIMO等、さまざまな研究機関や企業が以前から取り組んでいましたが、量産して、しかも一般家庭向けとして販売に踏み切った例はほとんどありませんでした。興奮しましたね。「ついにドラえもんのようなロボットが家に来る時代が到来するのか」と。


Pepperの発表に刺激を受け、それまで漠然と抱いていた「機械」「家電」という興味関心の方向が「ロボット」に集中したのかもしれません。ただ、学部の勉強だけではあまりにもその分野への理解が足りなかったので、大学院に進み、ヒューマノイドロボットを扱う研究室に入りました。当時はあまり意識していませんでしたが、ちょうどAIやロボットに世の中の注目が集まり、投資マネーが動いたり、業界で重要な出来事が起きたりしていた時期でした。そんな頃、弊社がロボット事業への再参入を発表。進学や起業等、進路に少し迷っていた時期でしたが「これは面白いチャンスだ」と思い、入社に至りました。

ロボットを自販機のように当たり前の存在に

「こんなロボットを作りたい!」という想いを聞かせてください。


方向性としては、一般の人に広く使われる製品や設備、サービスとしてのロボットを作りたいと思っています。そして、そんなロボットのある生活が当たり前の世の中にしていきたいです。


そもそも、ロボットの分野を技術として極めたいのであれば、制約の多いビジネスの世界よりも、学術研究等の世界を選ぶほうが王道です。でも、僕のやりたいことは、ロボットを学問することではなく、製品やサービスとして一般の人が活用できる形で世の中に出すことでした。大学院で所属した研究室では、数十年先を行くような超未来的なコンセプトのヒューマノイドロボットを研究開発していました。とても面白かったのですが、そのようなロボットがすぐに世の中に普及しない理由も同時に知ることになりました。いつかは普及するとしても、間に何段階か必要だろうなと。僕はその間にあるものから社会実装したいという思いのほうが強かったんです。


また、一口にロボットと言っても複雑で、定義が難しい分野です。一般の人にロボットと言うと、手足があったり人に話しかけたりするようなものをイメージしがちですが、実はそれらは実際の市場としてはかなり二ッチな存在です。ロボットとして圧倒的にメジャーな分野は、工場や倉庫のオートメーションに貢献する産業用ロボットで、一般の人は日常的にほとんど目にすることのないものです。


ただ、自分の関心は、そのような産業用途ではなく、人々の生活の風景をガラッと変えるようなコンシューマー向けロボットに向いていました。家電製品のプロダクトデザイン等、一般の人に向けたUI/UXを考えてきた経験が影響しているかもしれません。

最近でこそ、町中でPepperのような「一般向けロボット」を見かけることもそんなに珍しくなくなってきました。自動運転など、一般向けのメジャー領域になりうるロボット技術も出始めています。しかし、まだ「当たり前」ではない。エンターテイメントの域を出ておらず、体験したら驚くけれども、日常にはなっていないという段階ですよね。


一方で、たとえば自動販売機。お金を入れてボタンを押すとすぐに冷たい、あるいは温かい飲み物が出てくるというのは、とてもよくできた装置とシステムです。でも、もはや当たり前の存在になっていて、日々そんなことに注目したり、驚いたりしませんよね。そんな風に、ロボットを自販機のような存在にしていくことが僕の目標です。


ロボットが自販機のような存在に! 聞くだけでわくわくします。そのような熱意の原動力になっているものは何だと思いますか?


新しい体験をしたとき、そしてそれが日常になっていることに気付いたときの「この時代に生まれて良かった」という純粋な気持ちです。科学未来館で歩くASIMOを初めて見たときの衝撃、のような感覚ももちろん大好きですが、毎日スマートフォンで当たり前のようにSNSを使ったり、音声コマンドで家電を操作したりしているときにも、ふと「これってすごいことだよな」と感動することがあります。


長い人類の歴史の中でも、この時代に生まれていなければできない、かつてはSFの世界の話だったようなことが、日常の当たり前の体験として実現している。それに気付いたときの感覚がとても好きです。それを体験するだけなら消費者でいるだけでも良いわけですが、僕は、そんなSFのような体験を作り、提供する側にいたいと思っています。


「作る側でいたい」というこの感覚は、祖父の影響もあるかもしれません。化学系の会社に勤めていた祖父は、現役時代にポリエチレンの量産にとても貢献したそうで、「コンビニのポリ袋を当たり前のように使えるのは半分くらい自分のお陰げだ」と一緒にお酒を飲むときに自慢してくれるんです(笑)。誰の成果、と厳密に決めることはないとしても、自分が歳をとったときに、そんな風に誇りを持って人に語れる何かがあるのはとても素敵なことだと思っています。将来の自分が、そのとき当たり前になっているロボット、あるいは他の何かについて自慢できるようになっていたいですね。

今後2〜3年でどのようなことに挑戦していきたいですか?


いま関わっているロボットをより進めつつ、その先に自分が作りたいロボットをもっと具体化したいと思っています。ある程度目途はつけているのですが、まだ固めきれていないので、「僕のやる道はここだ」と宣言できるようにしたいです。すでに多くの人が目をつけている領域よりは、まだ誰も気付いていないような価値をロボットで実現できると理想的ですね。