角田 尭史(すみだ たかし)


愛媛県出身。大学卒業後、土木建築技術者としてキャリアをスタート。現在は、お試し移住をサポートするサービス「flato(ふらっと)」を提供する株式会社FromToで取締役を務める傍ら、Webメディア編集者や社会人向け数学家庭教師としても活動中。noteでは主に地方での働き方、キャリアの開拓方法について発信している。


ファーストキャリアの辛い経験から抱いた問題意識

角田さんは様々なお仕事に携わっていますね。それぞれのお仕事内容を詳しく教えていただけますか?


現在は主に3つの仕事に携わっています。


本業として、株式会社FromToというベンチャー企業で取締役を務めています。FromToでは、1ヶ月のお試し移住をサポートするサービス「flato(ふらっと)」を開発中です。これまで地方への移住は、情報が少ない上で決めなければならず、リスクが大きいという点が課題でした。お試し移住によって移住のハードルを下げ、誰もが好きな場所で自分らしく暮らしていける社会の創造を目指しています。FromToでの僕の役割は、戦略策定、お試し移住を紹介するメディアである「ふらっとメディア」のマネジメント、広報など。僕自身も東京と静岡の2つに拠点を置き、移住の魅力を発信することで、場所に関係なく働くライフスタイルを広める活動をしています。


その傍ら、「LISTEN(リスン)」というWebメディアの編集を担当しています。編集とは、記事のコンセプトや企画といった大枠を考え、ライターさんやカメラマンさんといったパートナーさんと一緒に記事を作り上げる仕事です。LISTENでは、魅力的な人や企業にフォーカスを当て、その背景にある苦労や努力、今に至るまでのストーリーを伝えるインタビューを発信しています。もともと編集長を務めていましたが、現在は業務委託で編集をサポートしています。


また、個人でも2019年夏から数学の家庭教師をはじめました。大学時代の友人から、「大学受験をする友達がいて、数学を教えてくれる人を探している」と相談を受けたことがきっかけです。今は週1~2回のペースで家庭教師を実施しています。

それぞれのお仕事を始めた経緯を教えてください。まず、Webメディアの編集者というお仕事を始めたきっかけは何ですか?


編集者を志したのは、1社目での違和感からです。


僕は工学部出身で、最初のキャリアは土木建築技術者です。入社2年目のころ、建築現場での仕事を任命されたことが大きな転機でした。大規模な現場で働くことはとてもやりがいがありましたが、人間関係があまり良好ではなくて、心身に不調をきたしてしまったんです。結果的に、現場からは離れることになりました。しかし本社に戻っても、どうやらみんないきいきと働けていない...。そこから問題意識が芽生えました。なぜみんな楽しんで仕事に取り組めていないのかと考えたときに、「『自分の仕事が誰かのために役立っている』という実感を持てていないからじゃないか?」と思ったんです。仕事は本来、誰かをハッピーにするためのものですよね。それを実感することができれば、仕事に対して誇りを持ち、楽しめる環境になるのではないか。そこで、「仕事の魅力や楽しさ、その仕事が誰かを幸せにしているということを伝えよう」と考えました。そして、世の中に物事を発信する “メディア編集者” という職業に興味を持ち、転職活動をする中でリスナーズに出会いました。


リスナーズを選んだ理由は、「人のストーリーを伝える」というメディアのコンセプトが自分のやりたいこととマッチしたからです。全く異なる業界で働いていたので転職には勇気がいりました。しかしリスナーズに出会ったときは「ここしかない!」と運命的な感情を抱いたんです。

そこから編集者としてのキャリアをスタートしたんですね。FromToでのお仕事はどのような経緯で始めましたか?


もともと知り合いだった代表から誘われ、2018年夏から副業という形でコミットしていました。代表と出会ったのは、まだ土木建築の会社に勤めていたときのこと。現場から離れて休職していた頃、何かに時間を使えないかと思ってやりたいことを探していました。そのときに、ライターの仕事を依頼してくれたのがFromToの代表だったんです。それがきっかけで「やっぱり発信することが好きだな。この仕事をやりたい!」という気持ちを抱きました。メディアの世界に導いてくれたことの恩返しをしたいと思い、誘われたときは二つ返事でした。そして、2019年11月からは正式にFromToにジョインし、チーフ・ストーリーテリング・オフィサー(CSO)という役職で「会社のメッセージに筋を通す役割」を担っています。


ライター、編集者、そしてCSO。役割にかかわらず、人のストーリーを伝えていくことは僕の使命だと思っています。土木の仕事で病んでしまった経験。それが苦しかったからこそ、ストーリーテラーとして、「目の前の人が少しでもいきいきと働けるヒント」を発信し続けたいです。

人のストーリーを伝えていくこと、そしてそれによって人々を幸せにすることが角田さんのミッションなんですね。数学家庭教師は少し文脈が違うと感じましたが、やろうと思った理由は何ですか?


純粋に目の前の人を支えたいという気持ちからです。その人の成長を見届けて、夢を全力でサポートしたいと思いました。


理系の仕事からしばらく離れて、数学の知識も抜け落ちていましたが、「やる」と決めてからはちゃんと復習した上で教えています。今できるかどうかで判断して自分の可能性を狭めたくないし、「いきいきと働ける」社会を作るための手段を限定したくありません。目の前の人が新たな一歩を踏み出すと同時に、自分も何か新しいものを掴めれば、この上ない喜びですし。実際、数学が事業戦略策定に役に立ったり、会計の勉強をするときにスッと理解できたりと、知識やスキルが後からついてきているので、挑戦して良かったなと思います。

働く場所をより自由に、キャリアチェンジをもっと気軽に

これらのお仕事を通して、どのようなことを実現したいですか?


「場所や職種に関係なく前向きに働ける社会をつくりたい」と思っています。


僕は愛媛で生まれ育ち、就職のタイミングで東京に来ました。地元に帰って友人と話すと、仕事に何かしら悩みを抱えている人が多いんですよね。あるとき、「角田は東京で働いていてすごいね」と言われたことがあって。「東京に行けばなんでも叶えられる。」「東京なら面白い仕事ができる。」そういうイメージがあるんでしょうか。しかし東京でも仕事に熱中できない人もいますし、「仕事が好き」とキラキラした顔で語っている人に愛媛で出会ったこともあります。だから、僕は「仕事の満足度において場所はそこまで重要じゃない」と思っています。場所に関係なく同等なチャンスや人との出会いを生み出せるような環境を作ることで、 「どこにいても夢を持っていい」と思える人を増やしていきたいです。


それを実現するための、キャリアに悩みを持つ人のヒントになるような先人のストーリーの発信、そして、地方でも楽しく仕事ができることを実証するための地方進出だと思っています。


未経験からメディア業界に飛び込んだり、本業だったLISTENの編集長を退任し、業務委託としてサポートする立場になったり、数学の家庭教師を始めたりと、形を柔軟に変えながら様々な仕事に取り組んでいます。複数の仕事をしていく中で、全く別物として取り組んでいたことが、ある日突然繋がって自分のスキルになるという経験をしました。だからこそ、「もっと気軽にキャリアチェンジを考えていい」ということを伝えていきたい。特に、20代後半の同級生たちの多くがキャリアについて悩んでいるので、そういう人たちの助けになりたいです。

建設現場での苦しい状況から、現在のように前向きにチャレンジできるようになった転換点は何だったんでしょう?


仕事が辛かったときに、自分や周囲を客観視してみたことが僕の人生が好転したきっかけだったと思います。そのとき感じた辛さや違和感をすべてメモに書き殴りました。そうすることで、「人々の働く時間を幸せにできるようなストーリーを伝えたい」という、自分が本当にやりたいことに気付けたんですよね。苦しい状況の中でも、自分を見つめ直すことで光が見えてくると思います。