藤田 健太郎(ふじた けんたろう)


メーカーや保険会社で商品企画、CS(顧客満足)企画等を経験した後、コンサルタントに転身。外資系コンサルティングファームにて、従業員エンゲージメントや組織文化のコンサルティングを担当する。


顧客の望むことが組織の問題で形にならないもどかしさ

現在のお仕事内容について教えてください。


外資系コンサルティングファームで、組織に関するコンサルティングを行っています。私が携わっている業務は大きく分けて3つです。


1つ目は、従業員エンゲージメントのコンサルティングです。従業員がどれだけ満足して意欲的に働くことができているか、そのために必要な環境を用意できているかは、会社の業績に関わる大きなテーマです。クライアント企業で意識調査やヒアリングを実施することで組織の課題を分析し、必要な策の提案を行っています。


2つ目は、働き方改革のファシリテーションです。ダイバーシティの推進や残業時間削減といった働き方改革に取り組む企業は増えています。「ダイバーシティ推進室」のような枠組みを作り、いろいろな部署からプロジェクトメンバーを集めてはみたものの、いかんせんみんな初めて取り組むこと。「何から着手すればよいのか」「何を目指せばよいのか」と立ち止まってしまうことも少なくないようです。部署間の利害関係が邪魔をすることもあります。そこで私たちがコンサルタントとしてそのプロジェクトに入り、実質的な旗振り役を務めることでプロジェクトを成功に導きます。


3つ目は、CEOの指名プロセス・後継者計画の策定支援です。投資家にとって、ある企業の後継者が誰になるのか、どのように選ばれるのかは非常に大きな投資判断材料です。ある日突然、誰かもわからない人が会社を背負うことになるのはリスクに他なりません。そのため、欧米ではコーポレートガバナンスの一環として、CEOの指名プロセスや後継者計画を開示することが一般的になっていますが、日本企業は出遅れている状況です。こうした中、私たちはクライアントの経営者とともに次期CEOの指名プロセスや後継者計画を策定し、それをどこまで開示し、開示しない部分はどのように構えておくのかに至るまでサポートしています。

組織コンサルティングに関心を持ったきっかけを教えてください。


組織に対して問題意識を抱いたのが今の仕事を選んだきっかけです。これまで商品企画やCS(顧客満足)企画として顧客視点で仕事をする経験を積んできた中で、せっかく顧客視点で良いもの・良いサービスを作っても、組織の問題で形にならないもどかしさを人一倍味わいました。


たとえば、過去に勤めていた保険会社では、「保険商品のパンフレットがわかりづらい」という苦情が多くの顧客から挙がっているにも関わらず、結局それが改善されることはありませんでした。保険のような無形商材は、パンフレットの内容こそが商品と言っても過言ではありません。それがわかりづらいというのは大きな問題のはずなのに、「デザイナーへの再依頼が必要だから...」「営業現場が混乱するから...」「今までもこうだったから...」と、単に変化することへの抵抗感から、実行されない。当時私はCS企画を担当していて、顧客の生のニーズを肌で感じていただけにもどかしく思いましたね。


中でも組織の課題を痛感した出来事は、iPodの登場です。Walkmanを生み出しヒットさせたソニーは、技術的にiPodを作れなかったわけではありません。なんなら、iPodが登場する前から、似たアイデアの検討はなされていたとも言われています。でも、組織の意向で、結局世には出なかったわけです。数年後、iPhoneが登場したときもまったく同じようなことが起きましたよね。当時Walkmanに関わる仕事をしていたこと、なによりソニーファンとしてとても悔しい思いをしました。


顧客視点での商品作りやイノベーションにおいて、組織が阻害要因になっている現実。なんとかしたいと思っても、組織の中の課題を組織の中から変えることは非常に難しいように感じました。第三者の立場から課題を堂々と指摘できるコンサルタントという仕事を選んだのはそのためです。

組織なんてなくなってしまえばいい!?

実際に組織のコンサルティングをされてみて、課題だと思うことは何ですか?


多くの案件に携わって思うのは、結局のところ、一人ひとりの従業員が「仕事が楽しい」と言えていないことが最大の課題なのではないかということです。「仕事を楽しむ」というと、「楽(ラク)をしている、遊んでいる」といった印象を持つ方もいるかと思いますが、それは違います。むしろ、仕事を楽しむことは、仕事を頑張ること以上に尊い概念です。仕事を「楽しむためにがんばる」ことはできますが、「がんばるために楽しむ」ことはできないでしょう。


仕事を楽しんでいる人は、仕事をやらされているのではなく、自分のやりたいことを主体的に持っています。やりたいことがあれば、それを実現しようとチャレンジが生まれる。そのチャレンジこそが、組織をポジティブな方向に進める原動力になると思うんです。


だから、私自身がクライアントに接するときも、意識しているのは「働くことの楽しさ」を届けること。そして、クライアントのチャレンジを精一杯後押しすることです。クライアント側担当者にとって、コンサルティング会社に依頼するようなプロジェクトは、その後のキャリアに影響を与える可能性のある、大きなチャレンジである場合が多いと思います。私はそれを全力で後押しし、その大きなチャレンジで成果を出してもらうとともに、その仕事を大いに楽しんでもらえるように協働したいと思っています。同時に、私自身も常に仕事を楽しみ、いろいろなことにチャレンジすることを心がけています。


最後に、理想の組織とはどういったものだとお考えですか?


逆説的ですが、組織なんてなくなってしまえばいいと思っています。そもそも「組織」という言葉の響きが好きではありません。「悪の組織」「組織病」という言い方はされても、ポジティブな文脈でこの言葉が使われることはあまりないように感じます。


小学校で、誰かが「鬼ごっこしようぜ!」と呼びかけたときのことを思い出してみてください。鬼ごっこをやりたい人がたくさん集まったとき、そこに組織という概念はあったでしょうか。本当にやりたいことがある人たちが集まれば、組織という仰々しいものなんてなくても、チームとして機能すると思うんです。究極的には、会社組織という枠組みを越えて、やりたいことがある多様な人たちが自由に集まって、チャレンジできる。そんな世界を実現していきたいですね。