柳田 亜沙美(やなぎだ あさみ)


株式会社凛 代表取締役。新卒で機械加工メーカーにて資材の発注・支払・在庫管理一元化システムを独学で構築したことをきっかけにソフトウェア開発会社へ転職。ヘッドハンティングを機にWebシステム会社と業務委託契約を締結し、フリーランスとしても活動の場を広げる。現在は女性のキャリア支援に力を注いでおり、女性向けプログラミングスクール『GeekGirlLabo』の運営や、女性の転職支援・派遣事業を行う。


大学は文学部卒。ひょんなことからプログラミングの世界に

まずは、株式会社凛の事業について教えていただけますか?


弊社の事業は大きく3つあります。1つ目がWeb制作・システム開発受託、2つ目が女性向けプログラミングスクール『GeekGirlLabo(ギークガールラボ)』の運営、そして3つ目が女性の転職支援・派遣事業です。


創業当初はWeb制作事業から始めたのですが、自分がWeb制作に携わるだけでなく、プログラミングを学ぶ機会を女性に提供したいと考え、スクールを設立しました。そして教えて終わりではなく、その後のキャリア形成まで支援したいと思うようになり、転職支援・派遣事業を開始しました。3つの事業はそれぞれ異なるように見えるかもしれませんが、実は繋がっているんです。

柳田さんはファーストキャリアからプログラマだった訳ではなかったんですよね?


はい。大学は文学部を卒業していたため、プログラマになろうとは露ほども思っていませんでした。新卒で機械加工メーカーに就職して1年間は現場で働き、その後、製造現場で使う消耗品を管理する購買部に異動しました。


プログラミングに興味を持ったきっかけは、購買部で資材管理を担当したことです。前任の方が年配だったこともあり、伝票処理は電卓計算かつ手書きという前時代的なやり方のままでした。最初は慣例にならって仕事をこなしていましたが、あるとき私のめんどくさがりな性分が限界を迎えたんですよね(笑)。ExcelとAccessを駆使し、独学で生産管理・在庫管理システムを構築しました。


そうした改善を続けて、最終的には在庫管理システムを作り上げることができ、システム開発に面白さを感じるようになったんです。そこから「本格的にシステム開発に携わりたい」と思うようになり、ソフトウェア開発会社に転職しました。


入社後は希望通り、大手通信キャリアの基地局制御システム、自治体の財務システム、ネットバンキング等の開発プロジェクトなど、さまざまな分野でシステム開発に携わりました。

そんな経緯でプログラミングの世界に入られたんですね!システム開発に携わっていく中で、なぜ起業を志したのでしょうか?


ソフトウェア開発会社に2年ほど勤めた頃、IT企業を立ち上げた友人から「うちの会社で働かないか」と誘いを受けたのがきっかけです。独立してフリーランスになり、業務委託で友人の会社に携わっていたんですが、経営者としていきいきと働く友人を間近に見ているうちに、起業への興味が湧いてきたんです。もともと新卒の頃から女性起業家の本を読むなど、起業への憧れはありました。ただ、手の届かないものと考えて気づかないうちにキャリアの選択肢から外していたんですよね。しかし、起業している友人の姿をみて「一か八かやってみよう」と思い立ちました。そうして2008年に設立したのが株式会社凛です。


「この事業を始めよう!」という明確な方向性は無かったため、まずは自分ができるシステム開発、Web制作受託事業から始めることに。1年ほど他社に常駐していく中で、システム構築やホームページ制作は私よりもできる人がたくさんいることを痛感しました。次第に、「起業したからには、自分にしかできないような世の中の役に立つことをしたい」と思うようになっていきました。


そう考えていたとき、常駐先で優秀なプログラマの方に教えてもらう機会があり、「教えてもらうこと」の重要性を体感して。私は独学でプログラミングを始めたので、「プロにじっくり教えてもらう環境ってこんなに成長スピードが違うんだ!」と驚いたんですよね。


また、プログラミング領域はまだまだ男性中心社会ですが、女性が活躍できるポテンシャルのある領域だと感じていました。プロに教えてもらってスキルを身につけることができれば、在宅や時短でも仕事ができます。プログラミングスキルを学ぶ機会を提供すれば、仕事を諦めていた女性たちの一助になれるのではないかと考え、女性向けプログラミングスクール『GeekGirlLabo』を始めました。

女性に特化している『GeekGirlLabo』が、誰でも通えるプログラミングスクールと違うのはどんな点でしょうか?


その時々のライフスタイルに合わせてレッスンを一時的に休むことができる『休会制度』がある点はユニークだと思います。他のスクールだと、家庭のことで学習に時間が使えないことに対して理解を得難い場合もあると思うのですが、『GeekGirlLabo』は運営も生徒も家庭がある女性が多いので、制度があるだけでなく各々のペースでレッスンに通いやすい文化も根付いています。


また、講師や添削係の多くを卒業生が担っているのも特徴的ですね。卒業生がプロとして活躍し始めてから添削をお願いしているうちに、「自分が教えてもらったように、これから学ぶ人たちの役に立ちたい」と手を挙げてくれる卒業生が増えてきて。卒業生と現役のつながりが非常に強いスクールだと思います。

フルタイムで働けなくても夢を諦めなくていい社会に

新たに、女性の転職支援・派遣事業も始められていますね。


はい。プログラミングのレッスンを受講し終わっても、自動車免許で例えるならば仮免許が取得できたくらいの段階です。プロになるには実務経験が必要です。実務経験を積むためにはとりあえず就職するのが一番だと思い、転職支援・派遣事業を開始しました。


人材事業は私自身まったく経験がなく、今も苦戦の連続です。それでも、「フルタイムで働けない女性をサポートする」という思いのもと、社員一丸となって事業を推進しています。

最後に、今後の展望を教えてください。


今後注力していきたいのは、女性の事業立ち上げ支援です。エンジニアとしてリモート・時短勤務が可能になるとだいぶ柔軟に働くことができますが、それでも家庭環境によっては、受託制作というかたちで働くことが難しい方も多いなと感じていて。自分で運営する事業であれば、なかなか時間が取れない方でも自分のペースでやりたいことを実現できるのではないかと考えています。


そのため、駆け出しデザイナー・フリーランスデザイナーを応援するモモンガビレッジと共催で、事業の立ち上げ方を学ぶことができる『begin』というイベントを開始しました。企画書の作り方やプレスリリースの出し方など、サービスや事業を作るにあたって必要なことをステップバイステップで習得できる機会を提供しています。さまざまな事情で働くことができなかった女性たちが、夢を諦めずに実現できる社会にしたい。そのためのキャリア支援を、今後もしていきたいですね。