中谷 真史(なかたに まさふみ)


慶應義塾大学経済学部を卒業後、外資製薬企業のノバルティスファーマへ入社。主力商品営業においてトップの実績を残す。その後ベイカレント・コンサルティング、リブ・コンサルティングを経て、2018年に株式会社マツリカに入社。現在は執行役員を務めながら、営業コンサルティング企業『Sales Science Lab, Inc.(セールスサイエンスラボ)』を立ち上げ、CEOを務める。


夢に破れ、見出していった「営業×コンサルティング」というアイデンティティ

まずは、現在のお仕事内容を教えてください。


クラウド営業支援ツールを提供する株式会社マツリカで執行役員を務めています。並行して『Sales Science Lab, Inc.』を立ち上げ、営業コンサルティングの事業を行なっています。現在に至るまで、コンサルタントとしては住宅・不動産、自動車関連、金融、パーソナルトレーニング、メーカー、ITスタートアップなど、50社以上の営業組織改革を支援させていただきました。


どちらも、「セールスというアートをサイエンスし、日本の営業をアップデートする」というモットーに基づいて活動しています。

中谷さんは、外資系製薬会社であるノバルティスファーマに新卒で入社していますね。ファーストキャリアとしてこの会社に入った経緯を教えていただけますか?


私は4歳でサッカーを始めて学生時代は一貫してサッカーに打ち込み、プロ選手になることを本気で目指していました。大学4年生の秋に引退するまで、朝から晩まで部活の日々。しかし、プロの道はそう簡単ではありません。結局、その夢は叶いませんでした。


サッカー一筋だった自分が将来何をしようかと考えたときに、「サッカーでプロになれないなら、ビジネスでプロになってやろう」と思ったんです。当時、「ビジネスのプロ」とは何かを考えた際に、安直かもしれませんが“経営者”が思い浮かんで。ここから、将来は経営者になるという新たな目標ができました。まずは商品やサービスを自分自身で売るスキルを身に付けるため、逆算してファーストキャリアは営業職に就こうと決めていました。


すぐに成長できる環境に身をおきたいと思い、営業の中でも難易度の高い不動産や証券といった高額商材を取り扱う企業に的を絞り、選考を受けていきました。その中で出会ったのがノバルティスファーマです。製薬会社のMR(医薬情報担当者)は、経験や知識が豊富なドクターの方々の信頼を得て商品を売らなければいけない、ハイレベルな営業力を求められる仕事です。また、ルートセールスで1日10件、年間約2000件というストイックな活動量が求められるため、その点でも早く成長できると見込んで入社を決めました。

自ら営業職を希望されたんですね。入社してからは、どのような経験をされましたか?


尖っていた性格だったからか、入社直後から良くも悪くも目をつけられていて(笑)。「一か八かやってこい」ということで、当時全国最下位の成績だった富山営業所に配属されました。もちろん不安もありましたが、「この程度のハードルも超えられなければ、経営者にはなれない」と思い、気持ちを奮い立たせて配属先に向かいました。とはいえ、正直に言って配属当初はしんどかったです。なかなか成果が出せず、苦戦する毎日。しかしそんな環境でも、3年目には全国でナンバーワンの個人業績を収めることができました。

全国最下位の営業所からナンバーワンの業績!いったいどんな工夫をされたんですか?


「天性の営業」のような人がトップセールスには多くいらっしゃると思いますが、実は私はまったくそんなタイプではなかったんです。むしろどちらかというと口下手で、盛り上げるのも苦手。そんな自分が営業のトップに立つためには「戦略で勝つしかない」と思い、ナンバーワンになれる領域に狙いを定めて戦略を実行していきました。


具体的には、新規の主力商品のセールスに特化して営業活動を行いました。既存商品のルートセールスでは、営業の方法も、販売できるターゲットも限られているのが目に見えていたため、ゼロから勝ち筋を切り拓ける新商品の営業に一点集中で取り組もうと考えました。


また、他の社員よりも1日の商談数をあえて少なくしたことも成功の鍵になったと思います。商談数を減らした分、市場調査やターゲット選定、戦略立案、商談準備に人一倍時間を掛けました。商談は1日10件という会社のKPIがあったのですが、そんな工夫をすることで1日3~4件の商談数でも売上は他の社員の数倍という、より高い実績を挙げることができました。

その後、転職してコンサルティングファーム2社で勤められていますね。なぜ急に営業からコンサルに転身したんでしょうか?


MRはお客様への商談のみを行う仕事だったので、契約周りや提案資料の作成などにはまったく触れてこなかったんですよね。商談のスキルや知識は一通り習得しましたが、一方でパワーポイントもエクセルも全く使えなかった(笑)。極端なスキルの偏りがあったんです。


「営業(外勤)のプロにはなれた。じゃあこんどは内勤のプロになろう」と考え、業務・戦略・ITの幅広い分野でコンサルティングに携われるベイカレント・コンサルティングに転職。コンサルティングはまったくの未経験でしたが、営業スキルはここでもお客様とのコミュニケーションにおいて活きました。営業経験のあるコンサルタントとして働く中で、「営業×コンサルティング」というスキルの掛け算で独自のアイデンティティが確立されていきましたね。


ベイカレント・コンサルティングでコンサルティングスキルのベースを学ぶことができたので、自分の強みである「営業×コンサルティング」をさらに磨くべく、営業改革や営業力強化に定評のあるコンサルティングファーム、リブ・コンサルティングに入社。大企業から中小企業まで幅広く営業組織改革に携わり、戦略策定やプロセスの改善などの支援を行いました。


営業もコンサルも一通り経験してみて感じたのは、営業がセンスで良し悪しが決まる「アート」のように捉えられているんだなということです。営業組織において、成果が上がるメソッドを体系立てることができる人材は一握り。また、大手コンサルティングファームでも「営業」というものを本質的に理解している人がほとんどいなかったんですよね。「営業×コンサルティング」を経験してきた私だからこそ、もっと営業を科学できると思いました。


このまま会社に勤め続けるという選択肢もありましたが、「自分の力でやっていきたい」という気持ちがふつふつと湧き上がり、営業コンサルティング事業『Sales Science Lab』を立ち上げました。

ご自身で事業を立ち上げながら、マツリカにも入社されていますね。出会ったきっかけは何ですか?


きっかけは、セールステックの領域に足を踏み入れようと情報収集していたタイミングで代表に誘われたことでした。営業コンサルタントとして成果は出てきたものの、自分ひとりで担える範囲には限界があると思ったんです。目の前の会社は変えられても、世の中全体は変えられないなと。そこから、営業コンサルタントとして自分一人がプロになるのではなく、プロがどんどん生まれるようなスケーラビリティを出すことが自分の役割だと考えるようになりました。

「日本の営業がここから変わった」そんな歴史をつくるために

ご自身の活動を通じて、どんなことを実現していきたいですか?


私のモットーは、「セールスというアートをサイエンスし、営業をアップデートする」です。


私はどんな営業も科学できると考えていて。営業を科学して型をつくっていくことで、日本全国の営業に携わる方が仕事にやりがいを見出し、自分の存在意義を発見できる状態を作りたいですね。 営業の型というのは、個性を押さえつけるものではなく、むしろその上に個のオリジナリティやクリエイティビティを発揮しやすくするためのものだと考えています。


営業を科学する取り組みとして、マツリカやSales Science Labでの活動の他にも、セールス系のイベントへの登壇や、セールスのデータを様々な角度で分析し、具体策まで落とし込んだ『営業解体新書』の執筆も行なっています。


今後の展望としては、Sales Science Labで培った知見をもとに、いつかセールステック企業を立ち上げようと考えています。「日本の営業がここから変わった」とうターニングポイントを自身の手で作りたいと思います。