細川 寛将(ほそかわ ひろまさ)


2009年大学卒業後、作業療法士として回復期病棟にてリハビリ業務に従事。その後、大学院を経て2012年に株式会社メディカルエージェンシーを共同創業。PTOTSTの働き方・学び方メディア『POST』の副編集長として従事し、医療・介護職のキャリアについて学びを深める。医療法人にて医療連携部部長、株式会社クリエイターズ取締役、含め複数法人の役員やアドバイザーとして広く携わり「医療介護系複業家」としての顔を持つ。現在、東証一部上場企業へマネジャーとしての転職を控える。医療・介護職の複業を推奨し、法人だけでなく個人に対してのキャリアコーチングを精力的に行っている。


マーケットの成長性を見込み、作業療法士に

現在のお仕事内容を教えてください。


名古屋の医療法人で、在宅緩和ケア事業の立ち上げやブランドづくりなどに取り組んだ後、施設長を務めています。ちょうど今転職を控えていて、一部上場企業の名古屋支社責任者として勤務予定です。


また、それ以外にもさまざまな複業に取り組んでいます。


メインは医療・介護系のスタッフに対するキャリアコーチングです。セラピストをはじめ看護師や薬剤師、介護福祉士、社会福祉士を始めとする累計120人以上の方々に、毎月の1 on 1を行ってきました。2019年にはキャリアコンサルタントの国家資格を取得したので、さらに活動を広げていければと思っています。


さらに、小規模のビジネススクールのような体裁でマネージャー育成にも取り組んでいます。20代後半から30代半ばまでのマネージャー層をターゲットに、経営の理解や人材育成、マネジメントスキルなどをレクチャー。他にも、依頼があれば介護事業所の経営コンサルティングや事業立ち上げの壁打ちも行います。大学から一貫して医療介護業界にいることで蓄積された知見でお手伝いしている形です。

本業以外にも、大変多岐にわたるご活動をされているんですね! どうやってスケジュールをやりくりされているのか気になります。


子どもが2人いるので家事育児にもかなりの時間を使いますが、ポイントは「24時間をいかに立体的に使えるか」だと思っています。


僕が複業する際は、必ずチームで取り組むようにしています。もちろん初めは僕がやるべきことも多いですが、チームが育っていくと、僕がやらなくてもいい部分が大きくなってきて、最終的には手放しで活動が進むようになっていきます。僕ひとりが複数の複業をやっているというよりは、複数の複業集団のマネジメントをやっていると言ったほうが近い。その分、複業マネージャーとしての実績や理念共有は大事になりますが、チームで取り組めば、自分の24時間にレバレッジをかけることができるんです。


一貫して医療介護の世界でキャリアを築いてこられたかと思いますが、この世界に関心を抱いたきっかけを伺えますか?


実はこれといった原体験があるわけではありません。将来何をやりたいかをぼんやりと考えた高校2年のとき、超高齢社会の到来によりリハビリというマーケットが今後成長することを聞きかじったんです。それがきっかけで大学卒業後は作業療法士として総合病院に就職しました。その後、同分野で大学院にも進学しています。


医療介護業界に対して抱いた問題意識


そこから現在のお仕事に至るまでにどのような経緯があったのでしょうか?


作業療法士として3年ほどたった頃、医療介護業界に対して次第に問題意識を持つようになりました。医療や介護の現場では、どうしても患者さんと1対1で接することが基本です。労働集約的になりやすく「もっと効率化することはできないのか」「本当に自分にしかできない仕事なのか」と葛藤するようになったんです。一方、臨床ではなく研究の道ではすでに優秀な方がたくさんいて、「この世界で僕にできることは何だろう」と一種のアイデンティティ・クライシスに陥りました。


後に、PTOTST(※ 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の総称)の働き方・学び方メディア『POST』を運営する株式会社メディカルエージェンシーを共同で立ち上げることになる輪違(代表取締役社長)、今井(取締役・編集長)に出会ったのはちょうどその頃です。たまたまSNSでつながった縁で「一緒にやらないか」と誘われました。自分にできることを模索していた当時、道が拓けるチャンスかもしれないと思い、飛び込むことにしました。当時は新婚で、しかも大学院にも通っていたので、睡眠時間は毎日3時間ほど。このときの目が回るような日々は、現在のタイムマネジメント術の糧になっています。


POSTの運営に4年ほど携わった後、30になる手前で再び転職。名古屋の医療法人の医師からお声がけいただき、名古屋の医療施設の施設長になりました。HP作成やブランディング、採用、経営など包括的に担当したことで、医療介護業界にいるとなかなか身につけることができない、実践的なビジネススキルも身につけることができました。その必要性をさらに痛感したことが、いま一般企業への転職を決意した理由の一つでもあります。


また、ビジネスの世界にも足を踏み入れたことで、新たな問題意識が芽生えました。医療介護業界スタッフのキャリアについてです。彼らのキャリアは、大まかに言うと、臨床現場で治療を極めるか、アカデミックな世界で研究を極めるかの2択しかない。時代背景のまったく異なる60代の先生がロールモデルになっていて、キャリアデザインという概念がそもそもありません。とにかく治療か研究かをひたすら極めればそれでいいとでもいうような。


実家が会社を経営していたためか「井の中の蛙でいることは怖い」と昔から教わってきました。世の中を俯瞰して見る力が必要だと。そんな自分にとって、旧態依然としていて、キャリアの多様性がない医療介護業界は、非合理に映りました。スタッフ向けのキャリアコーチングを始めたのはそれが理由です。


外の世界に目を向けることができたのは、僕自身がもともと医療や介護現場に対する熱意が高いわけではなかったからというのもあると思います。「人を救いたい」というような高尚な理由ではなく「今後マーケットが伸びそう」という理由で入ったからこそできたのかもしれません。

最後に、今後挑戦したいことについて教えてください。


キャリアコーチングは現在、僕が1 on 1でやっている状態なので、組織化を進めたいです。また、キャリアに限らず、人生を豊かにする手段としてビジネスやお金に関する知識の浸透も図りたいと思っています。ガラパゴス化した医療業界スタッフに今求められているのは、キャリアリテラシー、ビジネスリテラシー、マネーリテラシーの3つです。既存のサービスも活用しながら、業界に新しい風をもたらせるようにこれからも取り組みたいですね。


また、自分のキャリアに関しては、これまでの複業で構築したネットワークをさらに広げたいと思っています。僕はいま34ですが、残り2~3年はさらに広げ、40に差し掛かるにつれて収斂させていくという戦略を描いています。ここからがちょうど転換期。きっと起こるであろうさまざまな変化を楽しみたいと思っています。