宅間 朗(たくま あきら)


「プライベート・メンター」代表。外資系保険会社に勤めるかたわら、複業として個人向けキャリアメンタリングを行う。自身の20年間に及ぶ日系・外資系、多業界での豊富な経験に基づき、相談者のリアルな悩みに寄り添っている。


キャリアについて利害関係なく相談できる存在でありたい

プライベート・メンターとしてのご活動について教えてください。


個人向けの有料キャリアメンタリングを行っています。「将来について迷っている」「仕事とプライベートのバランスが取れなくて悩んでいる」「この仕事を続けても展望が見えない」といったさまざまなキャリアの悩みに寄り添う、社外のキャリア相談相手のような存在です。数ヶ月単位で定期的にメンタリングを実施し、抱えている悩みに対して解決の方向性を一緒に考え、自信を持って一歩踏み出していただくことを目指しています。


キャリア相談といえば、転職エージェントを思い浮かべるかも知れませんが、転職を前提とすることなく、利害関係を気にせずフラットに相談できる社外の機会は実は貴重です。有料だからこそ、相談者の悩みに親身に寄り添い、本当に良い方向性を提示できるよう心がけています。


相談に乗る上での私の持ち味は、多種多様な業界・職種での20年に及ぶ会社員経験です。幅広いキャリアのあり方や、様々な組織とマネジメントのスタイルを見てきているからこそ、相談者の悩みを理解し、共感することができているかと思います。

このような活動を始めようと思ったのはなぜですか?


直接のきっかけになったのは、前職であるアマゾンでの「1 on 1」(ワン・オン・ワン)です。これは、部署での仕事や人間関係などについて社内の先輩に相談できる制度で、私はその相談を受ける側をのべ数十回にわたって実施していました。


2週間から1ヶ月おきに後輩の相談に乗るうちに、彼らの気持ちや考え方が少しずつポジティブに変わっていく姿を見て、とてもやりがいを感じると同時に、キャリアの悩みについて誰かに相談できるこのような枠組みが、もっと社会に普及すべきだと思うようになったんです。本当は誰かに相談したいけれど、身の回りに相談相手がいない人はきっといっぱいいるだろうなと。


キャリアアップに特に意欲的な方や経営層であれば、専門のコーチをつけている場合もあるでしょう。逆に、仕事に過度なストレスを抱え、精神的に病んでしまっている方であれば、精神科医に相談できます。世の中の多くの人はそのどちらでもありませんが、彼らには、キャリアについてフラットに相談できる相手がいないんです。転職エージェントに相談すれば転職を勧められるかもしれないし、身近な人には、身近であるが故に本音を話せない場合もある。そんなとき、利害関係のない社外の相談相手こそ、役に立つことができると思ったんです。


そこで会社に勤めながら複業として、2019年にプライベート・メンターを設立しました。ありがたいことに、私が相談に乗ってくれそうなキャラクターに映ったようで、アマゾンで多くの方が繰り返し相談に来てくれたことも、この活動を始める後押しとなりました。

メンタリングを通じて伝えたいメッセージは何でしょうか?


「キャリアを拡げる楽しさを伝えたい」これが私のメンタリングのテーマです。キャリアというのは、決して一本道でつながるものではないと思うんです。山あり谷あり、いろんな分かれ道があって、そのときどきで訪れるチャンスをつかみ、挑戦していく。そしてそのうち振り返ったときに、キャリアができている。


「ひとつのことを極めろ」とよく言われますが、この言葉を真に受けすぎて、逆に自分の可能性を狭めてしまって葛藤している方は少なくありません。「自分は今までこれをやってきたから、ずっとこの道を進むべきなんじゃないか」と。ひとつのことを極めることは確かにすばらしいことですが、選択肢を広げれば、それぞれを掛け合わせることでオリジナリティを発揮できるようになります。私もまさに、そんな「拡げるキャリア」を歩んできました。

拡げたからこそ結果的につながった私のキャリア

宅間さん自身の「拡げるキャリア」について詳しく教えてください。


私のキャリアは、土木の領域から始まりました。大学・大学院で土木工学を専攻後、大きなプロジェクトをマネジメントできる人材になりたいと思い、大手建設会社に入社。鉄道建設に携わったり、社費での海外留学を経験したり。アルジェリアに単身赴任し、北アフリカを横断する高速道路の建設にも携わりました。


一方、その建設会社には10年間勤めましたが、大きなプロジェクトを率いるには、やはり大手では時間がかかるなと。また、自分の専門分野として当たり前になりつつあった土木という領域を完全に離れたときに、自分は戦えるのかを試してみたくて、完全に異業界の外資系メーカーの不動産事業部門にプロジェクトマネージャーとして転職したんです。私のミッションは、社内の業務改善で、最終的には業務改善の社内資格であるブラックベルトを取得するに至りました。


2年勤務したあるとき、再び転機が訪れました。外資系コンサルティングファームが、土木業界出身者を募集していたんです。同社は当時、建設領域のアウトソーシング事業を立ち上げようとして、土木のCAD図面を扱えて、英語で海外のエンジニアとやり取りができ、コンサルティング業務をできるプロジェクトマネージャーを求めていました。


「こんなピンポイントな求人、国内の転職市場には私くらいしか該当者はいないんじゃないか」と僭越ながら思いましたね(笑)。それくらい私の経験すべてを活かすことができるベストマッチな仕事でした。一旦土木の世界を離れ、外資系企業でマネージャー経験を積んだことが、このような形でつながるとは思ってもいませんでした。キャリアを拡げることの大切さを一番実感したのはこのときです。その後、「1 on 1」に出会ったアマゾンを経て、今に至ります。

振り返ってみると、常に5年前には想像できなかったキャリアを歩んでいるなと感じます。先を想定することは難しいですが、それが逆にキャリア形成のおもしろさでもありますし、だからこそ、目の前に見えているチャンスをつかみ挑戦することが大切だと思っています。

今後プライベート・メンターとして取り組んでいきたいことは何ですか?

現在のメンタリングは1対1の形式ですが、いずれは私と、相談者のキャリアを少し先に歩んだ「その道のプロ」のような方と2人で、2対1の形式でもやってみたいと思っています。似たキャリアを歩んだ人生の先輩から学べることは多くありますし、何より人と人とをつなげることが私自身好きだからです。


実はプライベート・メンターとは別に、私の大好きな食材であるパクチーを軸に人がつながれる場作りを趣味の延長として行っています。好きな食べ物でも共通の友人でも、偶然のご縁が人生のターニングポイントになることは少なくありません。私は「ポジティブ・サプライズ」という状況が大好きなのですが、新しい人とのつながりほど、この「ポジティブ・サプライズ」を引き起こしてくれるものはないと思っています。


だから私も、人とつながる機会を積極的に作るようにしています。そのような機会を多くの方に提供する活動を、プライベート・メンターとしても個人としても、一層取り組んでいきたいと思っています。