高尾 有沙(たかお ありさ)


1991年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、UXコンサルティング会社に入社し、コンサルタントとして400人以上のユーザインタビューを実施。マーケティングの課題解決ではなく、より人や組織に近い課題解決に携わりたいという想いから、2018年4月より株式会社OKANに参画。マーケターとして広告運用やサイト戦略立案から実装までを担う。現在はナイル株式会社にて、採用や研修業務を担当。


「もっと働く人の幸せに関わる仕事をしたい」という想いから人事に異職種転職

現在のお仕事内容を教えてください。


2019年11月よりナイル株式会社に入社し、デジタルマーケティング事業部にて人事・組織開発を担当しています。


私の仕事は主に採用と研修の2つです。採用業務では、面接や書類選考を、研修業務では、新しく会社に加わったメンバーがコンサルタントとして独り立ちするためのスキルやマインドを身につけられるような研修、さらに現在活躍するメンバーがよりスキルをつけるための学習機会を企画・実施しています。


また、キャリアコンサルタントの資格を取得し、企業のリーダーのための1on1サービス『YeLL』にて、1on1を提供するサポーターとしても活動しています。

高尾さんは、UXコンサルタントからマーケターに転向し、そして現在は組織開発を担当しているというキャリアがとてもユニークだと思います。まずは新卒の入社エピソードから教えていただけますか?


新卒で入社したのはUXコンサルティングの会社です。最初からUXやIT業界に興味があったわけではなく、就活では人材業界やコンサルティング業界を中心に選考を受けていました。直接的に人を支援できるような仕事がしたいと思っていたからです。


複数の企業に内定をもらいましたが、結果的にビジョンに一番共感できたUXコンサルティング会社に入社を決意しました。ユーザー一人ひとりの声を聞いて、より良い体験を提供したいという想いに心打たれたことが、入社の決め手でした。


入社してからは、UXコンサルタントとしてユーザーリサーチなどのプロジェクトに参画しました。ユーザーリサーチとは、サービスの開発や改善に向けて、ユーザーのニーズをアンケートやインタビュー、テストといった手法を用いて調査することです。


たとえば保険会社様がクライアントの案件では、「Webで若年層に保険商品を買ってもらうためにはどうすべきか」という課題への解決策を探るために、20代のスマホ利用状況を調査しました。被験者がスマホを利用しているときの様子を調査結果としてクライアントにお渡ししたところ、クライアントの方が「若い人たちの画面スクロールってこんなに速いんだ!ひとつひとつの情報を読み込んだりはしないんだね。これじゃ訴求方法を変えないと気づいてもらえないね」と驚いていて。それらの示唆を最終的に事業改善に役立てられたときは、本当に嬉しかったです。

とても充実したお仕事だったんですね。そこからなぜ転職しようと思ったんでしょうか?


UXコンサルタントの仕事はやりがいがあり、上司や仲間、お客様にも恵まれてすごく楽しかったです。会社全体としても「UXに携わる会社」という認知度が上がってきて、事業拡大しているところでした。一方、仕事はハードで残業は当たり前。「クライアントの幸せには寄与できたかもしれないけれど、それと引き換えに社員の幸せは犠牲になってしまうのではないか?」と課題意識を抱きました。「クライアントも会社も社員も、全員が幸せになる方法はないのだろうか?」と考えるようになりました。


そこから、UX(ユーザーの体験)だけでなくEX(従業員の体験)を向上することで事業の成果につなげることに興味を持ちました。UXを良くすることが事業の成果につながるということは社会的な共通認識になりましたし、ビジネスとしての成熟度も上がってきたと思います。しかし、EXはまだまだ体系化の途中。とすると、これからの私のライフワークはUXの向上よりも、働く人の幸せにコミットすることだと思ったんです。


そんなときに出会ったのが株式会社OKANでした。OKANは「働く人のライフスタイルを豊かにする」ということを理念に掲げていて、社員の働きやすさや幸せに寄与するサービスを展開しています。OKANが主催している『Employee Experience Summit』に参加してEX向上の取り組みを知り、「これがまさに私のやりたいことだ!」と胸が高鳴りました。そして、4年勤務したUXコンサルティング会社を退職し、株式会社OKANで新たな挑戦をすることにしました。


OKANにはマーケターとして入社し、オンライン、オフライン問わずマーケティングに関わりました。具体的な業務は、広告運用やWebサイトの戦略立案・実装などです。ゆくゆくは人事に携われるよう、マーケターとしての業務だけでなく、職種の垣根を超えて組織制度の改善にも力を注ぎました。たとえば、社員同士が仕事の成果に対して賞賛し合うピアボーナス制度を導入したり、先輩社員が後輩社員をサポートするメンター制度を取り入れたり。社員が安心して楽しく働ける環境を整えることで、早期離職を防ぐ取り組みを推進しました。


しかし、人材配置の関係でなかなか人事になることは叶いませんでした。改めて自分の気持ちに向き合ったとき、出てきた答えは「もっと働く人の幸せに直接関わる仕事をしたい」ということ。私は思い切って、未経験でも人事を募集している会社を探すことにしました。

そして現在の職場、ナイル株式会社に転職されたんですね。

はい。ナイルでは、「デジタルマーケティングの経験があり、組織開発の経験がある人事希望の人」を募集していました。そのようなキャリアを歩んでいる人は多くないと思うのですが、異職種転職を繰り返してきた私には奇跡的なほどぴったりで、正直、運命の出会いだと思いました。成果にはすごくシビアだけれど、挑戦している人を応援して鼓舞し合う「温かくて、いい意味でドライ」なカルチャーも自分に合っていると感じました。


今は、念願だった採用や組織開発に携われていることがとても嬉しいです。特に面接は、来てくださった方が弊社にフィットするかを見極めるだけでなく、会社としての魅力をアピールしなければいけないですし、良いと思ってもらえなければ入社してもらえない。チャレンジングな部分もありますが、すごく楽しいです。


私の仕事は採用から研修まで一気通貫なので、一人ひとりの成長を責任を持ってサポートし、見届けられるところにやりがいを感じます。自分がライフワークにしたかった「働く人の幸せを追求する」ということが実現できそうで、日々わくわくしています。

「こうあるべき」の呪縛を解きほぐす一助になりたい

高尾さんは様々な職種を経験されていますが、一貫して「一人ひとりの幸せ」を追求しているように感じました。そのように考えるようになったきっかけは何だったんでしょうか?


さかのぼると、幼少期に抱いた違和感が原体験だと思います。私は地方の比較的貧しい地域で生まれ育ったのですが、そのなかでも自分の家庭は相対的に裕福なほうでした。周りの子と遊んでいても、「何かが違うな」と馴染めない感覚があって…。一方、中学校からは私立に行ったので、中学高校時代はむしろ自分よりも裕福な家庭の子が多かったんです。そこで、「どこか馴染めない」の背景に社会格差があるということを明確に実感しました。そんな経験から社会の裏側にある構造に興味を持ち、大学では教育社会学を専攻しました。


「社会のどこに問題があり、原因は何で、どうやったら良くしていけるか」を問う社会学のアプローチは、私の考え方の根幹になっていると思います。人事とは、「様々なバックグラウンドのある社員がそれぞれ幸せに働けるようにするにはどうすべきか?」を考える仕事だと捉えています。社員一人ひとりのインサイトを知り、「どうすればこの人はうちの会社で楽しく働けるかな?」、「何がこの人にとっての壁になるだろう?」と考えることは、社会学に通ずるところがあるのかもしれません。

ご自身の活動を通じて、今後どのようなことを実現していきたいですか?


人事・組織開発担当として、「個人も組織も幸せにする」ということを実現したいです。


現職では、オンボーディング研修を始めたばかり。まだまだ、私個人としては既存の社員に対して十分には寄り添えていないと思っています。ゆくゆくは、幸せに働いてもらうために、キャリアコンサルタントの資格を活かして社内で話しにくいことでも相談できる仕組みを作りたいです。「とりあえず高尾さんに相談してみようかな?」そう思ってもらえるような人でありたいですね。


それから、人の幸せを阻む要因として「こうあるべき」という強迫観念もすごく大きいなと感じていて。そんな強迫観念に苦しむ人を少しでも減らしていきたいと思っています。私の周りにも、「仕事をしていないと人として失格」とか「結婚しないと負け組」といった呪縛を自分にかけてしまっている人が結構います。そんな人に「こんな考え方もありかも」と思ってもらえるような存在でありたいですね。本人が呪縛に気づくサポートをし、それと向き合うなり手放すなりすることで、少しでも心地よく生きられる一助になれれば良いなと思います。