増子 彩夏(ますこ あやか)


新潟県出身。東京大学教育学部在学中。高2のときに参加した合宿をきっかけに母校初の東大合格を果たした自らの経験から、高校生向けのキャリア教育合宿やイベントを主宰。2020年から事業化予定。


地方の夢なき女子高生、東大を目指す

現在のご活動について教えてください。


高校生へのキャリア教育合宿やイベントの企画・運営を行っています。進路や将来に悩む、ごく普通の高校生が全国から集い、かつては同じように悩みながらも道を拓いてきた大学生の先輩とともに過ごします。


合宿は単に勉強を教えるだけの場ではなく、一人ひとりの将来の目的・目標設定や達成のためのタイムスケジュール作り、動機付けのための講演会、大学生との対話セッションなど、受験勉強を目的化しない豊富なプログラムで構成されています。これまで5000人以上の生徒さんと関わり、周りの誰もが「絶対無理だ」と言うような志望校への合格を後押ししてきました。


私自身、高校生のとき、田舎の出身校で最初の東大生になりました。大した夢もなく、なんとなく生きていた当時の私が変わるきっかけをくれたのが、高2のときに参加した合宿だったんです。


私と同じように人生が変わるきっかけを多くの高校生に届けたいと思い、これまで活動してきました。思いに共感して協力してくれるメンバーの支えもあり、2020年からは本格的に事業化予定です!

開校以来初の東大合格者なんですね。高校時代について詳しく伺えますか?


私の出身校は、市立の中高一貫校です。東大合格者を毎年輩出するような、いわゆる名門校では決してなく、卒業生の進路としては地元で就職したり専門学校に行ったり、中には夜の仕事に就く子もいる学校でした。


私自身も、高2になるまでは東大はおろか、大学へ行くことすら考えていなくて、当時は「受付で働きながら公務員の夫を見つけて寿退社!」くらいしか考えていませんでした(笑)。両親からも多くを期待されるわけでもなく、周りに合わせながらなんとなく過ごす日々。そもそも高望みしたところで、卒業生の進路を見ていると、所詮自分の選択肢なんて限られている気がして、相対的にマシなものを選ぼうとばかり考え、心からワクワクするものなんて一つもありませんでした。


でもあるとき「このままじゃヤバい」と思ったんです。何一つ本気で取り組んだこともないまま卒業するのかと思うと怖くなりました。のほほんと『どうぶつの森』をやっている場合じゃないかもしれないと(笑)。


何でもいいから目標を持って、とにかく一生懸命やってみようと思い『18歳のハローワーク』を読んだり、行きたい大学を調べたりしましたが、どうにもこれといってやりたいことが見つからない。そこで、ドラえもんの「もしもボックス」が使えたら、何をお願いするかなと考えてみたんです。唯一思いついたワクワクした夢が「AAA(※ 音楽グループ)のにっしーと結婚したい」(笑)。そのためにはアナウンサーになるのが最短で、学費を払える国立大学に絞ると、アナウンサーを多く輩出しているのは東大だと。そこで初めて目標が決まりました。今思うとすごく恥ずかしいんですが(笑)。


突然「東大に行く」と言った私に、親も先生も呆れ果てていました。実際、勉強に取り掛かってみたものの、目標が高すぎて頑張っても手が届く気がせず、やる気が起きません。結局、1週間ともたずに元の生活に戻ってしまったんです。


私の人生を変えた5日間の合宿を、後輩へ


そこからどのようにして再びやる気を出していったんでしょうか?

「やっぱりダメか」と、変われない自分と変わりたい自分とが交錯し、欲求不満になっていたあるとき、たまたま聞いたことのある予備校から手紙が届きました。東大合格合宿のお知らせでした。


「これに行ったら、もしかしたら変われるかもしれない。いや、これに行って変われなかったらもう本当にダメだ」と思い、親に頼んでみたものの、「お金もかかるし、行ったところでどう変わるの」と案の定反対されて。こうなったら意地でも行ってやると、貯めたお年玉を引っ張り出して東京へ向かいました。高2の夏休みのことです。


それまで、自分なんかが、東大を目指す資格があるのか自信を持てませんでした。「生まれ持った能力やそれまでの経験によって、夢を叶えられる人とそうでない人が二分される。やっても鼻から無理なら努力したって無意味じゃないか」という考えがあったからだと思います。しかし「今の状況どうこうではなく、変わりたいという意思と勇気があれば、なりたい自分になる資格は誰にでもあるんだよ」という先輩からの言葉で、その考えは大きく変わりました。

「この合宿で出会った大好きな仲間や、期待して送り出してくれた先輩の思いに応えたい。手の届かいないように思える夢でも叶うと証明して、進路選択に悩む後輩たちを勇気づけられる人になりたい。」そう思い、今度こそ本気で東大を目指そうと誓いました。

そこからは別人のように、一心不乱に勉強に打ち込みました。クラスメートや先生からも「どうせ落ちる」と散々バカにされても立ち止まらず。決して順調な道のりではなく、模試は最後の最後までE判定。くじけそうになったことは何度もあります。それでも他大の併願もせず東大一本で頑張り続けたのは、当時の私のように自分に自信がなく、将来を描けない高校生の希望の星になりたかったから。もし合格できなかったら「やっぱり夢なんて叶わない。頑張るだけ無駄だ」と証明してしまうことになると思ったんです。それだけは絶対に嫌でした。


入試が終わったときは、「絶対落ちたな」と思いつつも後悔はなく、むしろ晴れやかな気持ちでキャンパスを後にしました。初めて自分のことが好きになれました。最後まで本気で頑張れる自分になれたことが何よりも嬉しかったんです。


合格発表の日は、学校のパソコン室で受験番号を探しました。ほとんどダメ元だったので、画面の前のその数字が意味するところを理解するのにしばらく時間がいりました。母に慌てて電話した際に「ありがとう。夢は叶うんだって、彩夏から教えてもらったよ」と、泣き声で言ってくれた言葉が本当に嬉しかったです。


見事な大逆転勝利だったんですね。その経験を経て、今後はどんな合宿を作っていきたいとお考えですか?

私が目指すのは、都会のお金持ちでも名門校に通うわけでもないごく普通の子の「挑戦してみたい」という気持ちを後押しできる合宿です。

「夢は声に出せば叶う」と言いますが、そのためには安心して自己開示ができる相手が必要です。高校生のころ、私の周りには本心から夢や悩みを打ち明けられる存在や自分に期待をしてくれる存在がほとんどいませんでした。だからこそ私は、昔の私のように自信がなく葛藤する高校生が、安心して夢に向かって踏み出せるきっかけを作りたいんです。私自身の経験も踏まえて、「誰だって夢を描いていいし、努力は決して無駄じゃないんだよ」と伝えていきたいです。


頑張るものは、受験勉強である必要はありません。スポーツでも、何か他のことでもいい。やりたいことがまだない子に対しては、ロールモデルになり得る大学生や社会人との交流の場を作ったり、一緒に考えたりする機会を作りたいと思っています。


人は、生まれたときには無限の可能性を持っていて、小さい頃は「アイドルになりたい」「戦隊ヒーローになりたい」という空想めいた夢でさえも、大人は「できるよ」と言って喜んで応援してくれました。でも大きくなるにつれて「現実を見ろ」「お前には無理だ」という言葉や世間の常識が純粋な心を蝕んでいき、気付かないうちに自分で自分の心にリミットをかけてしまいがちです。一度きりの自分の人生を本気になって生きてほしいから、誰もが自分らしい夢を掲げ、自分でも驚くほどの結果を導くための活動を広げていきます!