榎本 知史(えのもと ともふみ)


ミッションベース複業家。新卒でレバレジーズに入社し、ライター、マーケッター、営業など多様な職種を経てWebディレクターに。現在は、プロダクトマネージャーとして5社で複業。プロジェクトマネジメントやグロースハック、組織開発の分野でも活躍する。


自分らしい働き方を求めてたどりついたパラレルワーク

現在のお仕事内容について教えてください。


Webサービスのプロダクトマネジメントを中心に仕事をしています。コンセプト作りやマーケティングリサーチ、UX/UI設計に加え、組織開発も手掛けることで、プロダクトとそれを支える組織の両面から、持続的に成果を上げる体制構築に取り組んでいます。


また、自分が最も自分らしく働ける手段を選んだ結果、1社で正社員として働くかたわら、4社で業務委託を受ける複業という働き方をしています。複業を始める以前は、主にITベンチャーで正社員として働いていて、4回の転職を経験しました。

自分らしくいられる働き方として複業を選んだ経緯について伺えますか?


今でこそ、複業という新しい働き方を進んで取り入れていますが、大学時代まではむしろ、周りに合わせて流されながら生きているような学生でした。単に手堅いという理由で理系に進み、深く考えることもなく化学を専攻。そんな生活に対するもどかしさがじわじわと大きくなり、ある日、コップの水が溢れるかのように、このままではいけないと気付いた瞬間があったんです。


僕が学生だった当時は、Googleが実践していることで広く知られることになったマインドフルネスの黎明期でした。僧侶の友人が身近にいたこともあり、禅やヨガをやってみることで、改めて自分が大切にしたい価値観を問い直すことにしたんです。余計な思考を削ぎ落とし、深く、静かに自分と対話した結果、最後に残ったのは「自由に働きたい」という気持ちでした。


1社目にレバレジーズを選んだのは、幅広い職種を経験しながら、将来的に自由な働き方を手に入れるのに必要なスキルを身に付けられると思ったからです。実際に、マーケッター・ライター・営業職・アナリストといった幅広い仕事を経験させていただく中で、僕が特に魅力に感じたのはWebディレクターの仕事でした。


プロジェクトの進め方の道筋を示す存在であるディレクターは、プロジェクトメンバーの働き方に対して大きな影響力を有しています。サービス内容や、採択する開発手法によっても働き方は大きく変わるので、働き方について考えるにはこの上ない職種だと思ったんです。


Webディレクターとしてしっかりと経験を積んだ後、ランサーズやLIFULLなど、4回の転職を経て現在に至っています。一回一回の転職は、理想的な働き方を追求するための僕自身の実験とでも言えましょうか。あるときはワークライフバランスを重視、またあるときはビジョン共感を重視というように、毎回自分の心の声に従って立てた仮説の中から自分に本当にフィットする働き方を、体を張って模索しました。


このような考えで転職を重ねたのは、プロダクト作りにおけるリーンスタートアップというコンセプトを、キャリアにも当てはめることができるのではないかと思ったからです。自分のキャリアを1つのプロダクトとして捉えたときに、より大きくグロースさせるためには早いうちに仮説検証を繰り返したほうがいいのではないかと。


実験の結果、気付いたことがあります。それは、マインドフルネスを始めたことも、自由な働き方に興味を持ったこともすべて、「人間らしさ」を求める動きにつながっていたということです。それに気付いたとき、「人間回帰」という自分自身のミッションが定まりました。同時に、そのミッションを軸に働く先を選ぶ「ミッションベース複業家」という働き方が、まさに自分の追い求めていたものだと腑に落ちたんです。

現代社会には「第二のルネサンス」が必要だ

「人間回帰」という考え方について詳しく教えてください。


多くの人に人間らしさを取り戻してほしいという意味を込めて「人間回帰」と呼んでいます。かんたんに言うと「もっと自分らしくイキイキと生きようよ」ということです。


では、人間らしいとは一体どういうことか。僕は「自分の軸を持っていて、他者とオープンかつフラットに対話できる状態」だと考えています。


実は、人間らしさを取り戻そうというムーブメントは、はるか昔にも存在しました。ルネサンスです。ルネサンス以前の中世ヨーロッパ社会は、教会や血縁、身分といったものが人間らしく生きることを不条理に制限していました。そんな時代に、言葉や論理の力で自由や平等を獲得せんとした活動こそが「人間復興」というキーワードに象徴されるルネサンスでした。


しかし、ルネサンス期を経て、本来は人間をより人間らしくするために発達した科学技術や資本主義といった近代の社会システムは、逆に人を不幸せにした側面もあるのではないかと感じるんです。社会心理学者のエーリッヒ・フロムは、次のように述べています。「過去の危険は人間が奴隷になることだった。未来の危険は人間がロボットになるかもしれないことだ」と。そんなときだからこそ、今一度立ち止まって、ロボットではなく「人間らしさ」を取り戻すことに改めて目を向けるべきだと考えています。言わば「第二のルネサンス」が求められているのではないでしょうか。


人間 “回帰” と言っても、古き良き時代に逆戻りさせようというような懐古主義的な考え方ではありません。資本主義は間違っているとか、科学技術は悪だとか、そんなことを言うつもりもありません。現代人が失いつつある「人間らしさ」を取り戻そうよと、シンプルにそれだけなんです。


人が「人間らしさ」を取り戻すにはどうすればいいのでしょうか?


まずは自分なりの軸を持つために、心の声に耳を傾けることが大切だと考えています。特に、キャリア選択の場面において、単に市場価値の高い職に就く、あるいは巷で言う “いい会社” に入るというのは、周りの声を聞いているだけで、自分の軸で判断を下しているとは言えません。自分自身の心の声に耳を傾け、内なるミッションを拠り所に人生選択ができる人を増やしていきたいと思っています。そのために、自分のミッションを見つけることをテーマにしたサービス作りやワークショップの企画、コーチングなどにはすでに着手しています。


現在は、個人的な事業として「クィア・アイプロジェクト」というものを進めています。一人ひとりのミッションの言語化を手助けすると同時に、そのミッションにあった名刺や服など、トータルなパーソナルブランディングを提案していく取り組みです。ファッションやインテリアなど、その道のプロであるゲイ5人組が、苦悩を抱える人たちを次々にプロデュースしていくNetflixオリジナルドラマ『クィア・アイ』から名前を借りています。


プロジェクトを始めたきっかけは、僕自身がCI(コーポレートアイデンティティ)を言語化する仕事をしていた中で、友人にPI(パーソナルアイデンティティ)を言語化してほしいと言われたことでした。まだ検討段階ではありますが、今後はこのような活動を通じて「人間回帰」を広めつつ、自分自身も引き続き「自分らしさ」を追求する生き方ができればなと思っています。